『ミステリーゾーン』に学ぶ
かつて80年代に『トワイライトゾーン』なるオムニバス映画が公開され、その時、かつて50年代に、同タイトルのSF(サスペンス・ミステリー・ホラー)ドラマが制作されていたことを知った。日本では『ミステリーゾーン』のタイトルで公開され、後に円谷プロの『ウルトラQ』や『恐怖劇場アンバランズ』、そしてフジの『世にも奇妙な物語』に多大な影響を与えたことも。
そんな『トワイライトゾーン』の映画版でもリメイク版でもないオリジナル版が、『ミステリーゾーン』の邦名で、この度CSのスーパー!ドラマTVで放映されることを知り、取り合えず録画することにした。そして一昨晩、その記念すべきシーズン1第1話「そこには誰もいなかった」を観賞した。
自分が誰なのか、自分がいる場所が何処なのかも覚えていない主人公の男は、ある町にたどり着く。しかしその街には、誰一人いない。コンロにかけられたコーヒーのポット、灰皿に置かれた吸いかけの葉巻など、そこに人がいた痕跡はいくつも見つかるのに、男は誰とも会えない。電話をかけても自動録音の音声が響くのみ。そんな中、無人の映画館に入ると、いきなり映画が上映され始めたが、映写室を覗くと、やはり無人の映写機が回り続けているのみ。
前中盤はこのように無人の街で、自分の正体すら思い出せない男がさ迷い歩く姿が延々続く。しかも彼は奇妙なことに、どこか人の気配を感じ続ける。そんな一連のシーンで秀逸だったのが、映画館の階段の駆け下りて男がこちら(カメラ)に向かってきた時、一瞬その横にいきなり別の人影が写ったと思った瞬間、その人影は進行方向に激突し、画面が突如割れ、それで、その人影が男自身で、実は最初の駆けてくる男の姿が、鏡に映ったものだった、っていうカットだった。このセンスには脱帽したね!
その後、路頭に迷った男は、ついに踏切の警報器を見つけ、ずっと押し続ける。次の瞬間、画面はモニターを見つめる多くの将校の姿に変わり、そのモニターに映る件の男は、ある狭い空間に閉じ込められ、全身にいくつもの電極を付けられて、そして行為自体は、空間の中にあるボタンを(警報器を押していた仕草と同様に)押し続けている、という場面に転換する。実は、アメリカ空軍が、月探検に兵士を送り出す計画を立て、ロケットで月まで向う長い道のりの孤独に耐えられるかの実験を、男を使って実験していたことが判明する。要は、男が体験した無人の街での出来事は、全て密室で極限状態に陥った彼の妄想だったわけだ。無人の街で彼が人の気配を感じたのも、無意識に自分をモニターしている将校たちの視線を感じてのことだった。そんな宇宙飛行士の候補として実験に参加した男が、担架で運ばれながら、ぼんやりと空に昇っている満月を見つめるところで、物語は幕を閉じる。
この回のドラマの脚本を務めたのが、かのロッド・サーリングで、彼は冒頭とラストにストーリーテラーとして登場する。この手法は『ヒッチコック劇場』のそれを踏襲したんだろうが、これが『恐怖劇場アンバランス』の青島幸男や『世にも奇妙な物語』のタモリに受け継がれたんだろう、って思うと感慨深い(;^_^A
残念ながら、シーズン1ということで、あの有名な「チャラリラチャラリラ~♪」で始まるテーマ曲はまだ流れていなかったけれど、こういう古典的でひねりの利いたドラマを観賞するのは、自分の企画力や脚本表現力の糧になると思うので、今後もしっかり録りためて、観賞していきたいと思ったね(;^_^A