神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

デジタル映像編集故の”手作業”感覚

 CSのディスカバリーチャンネルで「名車再生 クラシックカー・ディーラーズ」なる番組が放映されていて、機会があれば好んで観ている。この番組は、イギリスの制作会社が作ったバラエティーで、ディーラーのマイクが素材は素晴らしいがかなり傷んだほぼ“クラシックカー”といっていい車両を安く買い入れ、それをメカニックのエドかアントが丹念に修理・改造して、それをマイクが次なるオーナーに好条件で売る、というプロセスが毎回繰り広げられる本格レストア番組である。日本車が取り扱われるケースも多く、特に地元広島のメーカー・マツダの初代ロードスターが対象になった回は、その見事なレストアぶりと共に、ロードスターがイギリスでいかに愛されているかを知れて嬉しくなったものだった。

 

 ところで、ちょっと前に観たのは、1972年式 ダットサン・510、要は石原プロの『栄光への5000キロ』に登場した日産ブルーバードのレストアで、担当はアントだったが、日本円にして50数万円でマイクが購入した、無茶な改造、雑な塗装、ボロボロの内装、トランスミッションの不調といったトラブルを抱える中古車を、ボディーの切断・溶接から始まって、外装の研磨および再塗装、トランスミッションの交換やそれに伴う部品の手作り交換といった細かいプロセスを踏んでよみがえらせ、結局200万円以上の値での販売に成功する、という過程が描かれていた。

 

 

 私にはとてもそんな技術はないが、ずっと以前、水溶性アクリル塗料が出回り始めた頃、プラモデルの塗装を、それなりに丹精込めて行っていた記憶が蘇って、観ていて何だか嬉しくなってしまう。それと共に、今行っている映画制作の、それもポスプロ作業が、意外とこのレストア作業に似ているなぁって実感した。

 

 勿論、映画の場合は新撮なので、別にレストアではないのだけれど、一応ロケが終了してから編集作業に入る過程で、その時点で手にした素材をただ単に予定通りにつなげるだけでなく、その素材を使って新たに映画を作り上げていく感覚はある。その過程で改めてインサートカットを必要に応じて撮り直すとか、映像を並べ替えたり自在にトリミングしたりするとか、時には元々計画していなかった効果音を挿入することによって新たに“演出”するとか、事細かな“手作業”を積み重ねて、一本の映画に仕上げていく。しかも、そんな手作業も、意外とフィルムを使ったアナログ編集よりも、現在のデジタル映像・ノンリニア編集の方が手数が多くなった気がする。それもそのはず、一度と撮ったら加工が不可能なフィルムと違い、デジタル映像は色合いからスピードまで、かなりの部分、後作業・加工が可能だからだ。それこそ、単純な効果であるフェードイン・フェードアウトからオーバーラップといったものも、フィルム時代は撮影時に操作しておかないといけなかったもの(;^_^A

 

 今、映画を制作するにあたって、今より条件の厳しかったフィルム撮影を経験したことは大きな強みだが、だからといってフィルムが現在のデジタルよりも格が上なんて思ったこともないし、当然思うべきではない。デジタルには工夫の楽しさとその膨大な選択肢の中から自分でベストな効果を選ぶ大変さもある。しかし、そんな“手作業”は大きな魅力だ。

 

 実は現在、他の監督さんが撮った映像の編集を請け負っていて、気分的には「クラシックカー・ディーラーズ」なんだけど(勿論「クラシック」なんて書くのは失礼な、あくまでれっきとした新撮映像なんだけれど、外部から素材を預かった、という点においてです(;^_^A)、これからお預かりした映像をどのように完パケに仕上げるか、エドやアントに負けない、きめ細かな作業を続けていきたいと思っている。