神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「ひろしま映像ショーケース2018」感想

  日付が変わって昨日、行って参りました「ひろしま映像ショーケース」! もちろん上映開始から最後まで……挙げ句は関係者の一人としてIPF代表の立場で、挨拶をする羽目にまでなってしまいましたが……(;^_^A

  それにしても、これだけの様々な監督作品を一会場で一堂に会して観賞するのは大きな意味がありますね! 私も大いなる刺激を受け、今後に向けての志を高めることが出来ました。

 改めまして、今日「ひろしま映像ショーケース」で観賞した作品について感想です……(ちなみに全て初見です(;^_^A)

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『恋は紅なり』(はまの省蔵監督)

  のっけからドローンによる瀬戸内の空撮と荘厳なBGMという圧巻のオープニングからスタート。本作のモチーフになっている『葉桜と魔笛』は、私も教材として用いたことがあるのでよく知っていたんだけれど、確かに短編に過ぎないあのストーリーを、ほぼ忠実に、それでいてサイドストーリーを交えながら1時間近くまで引っ張る構成は上手いと思った。またバランスはさておき、きちんとラブロマンス・アクション・そして短いながらもエロスまで配して、エンターティメントの要素を律儀かつ贅沢に盛り込んだ王道展開も面白かった。役者の個々の演技もしっかりしていた。時代が昭和初期で、なかなか難しい面もあったと思うけれど、瀬戸内の町並みを上手に使って、映像も安定していた。とても愛らしい、珠玉の作品に仕上がっていたと思う。


 『阿鵝羅』(キノシタケイタ監督)

  他のキノシタ監督の作品同様、激しすぎるアクション(ここでは剣劇)にいついもながら圧倒される! 冒頭の伊賀忍者狩りのシーンから究極のチャンバラを見せつけてくれる。以後、『用心棒』『座頭市みろくの里ロケ版)』辺りのクールな時代劇を彷彿させる展開で、それぞれキャラの立った面々が宿場町の街道や民家などで目にも留まらぬ剣劇を見せつけてくれる。ちょっとこまっしゃくれた娘が登場するのもいいバランスで、主人公の忍者・阿鵝羅の意外な人となりを示すいいスパイスになっていたと思う。またおのおのの洗練された身体能力のみならず、アクションに特化した絶妙のカメラポジション・小刻みなカット割りなど、前編アクションに貫いた、しかも16分という尺の中で見事にまとまった良質の映画だった。


『URGE TO KILL』(キノシタケイタ監督)

  前作とは打って変わって、ガンアクション中心の現代劇。いきなり黒塗りのバンに強面の男たちという不穏な雰囲気で物語がスタートし、謎の殺し屋と彼を拉致した敵組織との間で、思いがけない殺戮劇が展開していく。まずはその殺し屋のあっと驚く“変身”ぶりが、まるで“全身リアル「多羅尾伴内」”といった趣で、のっけから観客のハートを掴んでしまう。剣劇とは違うナイフや銃(挙げ句はガトリング銃まで!)、そして素手の白兵戦まで交えたバトルは、観ていてただただ唖然とするばかり。中でも“女性”となってアーミーナイフで応戦するシーンは韓国映画究極のヒロインアクションムービー『悪女』の大殺戮シーンを彷彿させる名シーンだった。本作も細かい導入部など切り捨てて、アクション映画として成立する最低限の尺で、逆に凝縮された作品に仕上がっていたと思う。それにしても、こんなレベルの作品がショーケースで「自主映画グループ作品」のカテゴリーで上映されるのは驚きだ。正直言って嬉しい!


『雲の通ひ路』

  「音戸の瀬戸」を舞台にした(監督の弁によると)“寡黙”な物語。吉松監督の作品は何度も鑑賞したが、その独特の長回し移動撮影は今回も健在で、場面によっては「クレーンを使ったのでは」と思えるくらいの巧みなカメラワークもあった。そして何よりも、カメラの性能やアングルの設定、露出などの調整によってなし得たと思うんだけれど、その映像はあたかもフィルム映画のようで、その中で俳優陣のナチュラルな演技が同録で撮られている、という、往年の『ドキュメンタリー映画』を観ているような雰囲気に囚われた。きっと「岩井俊二」や「市川準」的な映像なんだろうけれど、むしろ佐々木昭一郎の「四季・ユートピアン」を彷彿させる作品だった。台本はなくアドリブで撮られていたとのことだったが、それ故むしろストーリー展開や結末は意外にもオーソドックスで、個人的にはその方が好感が持てた。フィルムの質感というか様式美を保ちつつ、そこで俳優が生で息づいている……そんな映画だったと思う。


ビターズエンド Part1』(鏑木悟道監督)

  当団体IPFの作品ながら、封切が他団体のイベントだったせいで私も今回が初見だった。ただ一時期編集を手伝っていた時期があって、いくつかのシーン・カットやストーリー展開は既に知ってはいた。この作品の主人公であるサキが余りにも不憫で、前半は一部じれったい場面もあるんだけれど、不思議な少女の存在がある種彼女の支えになっていく。とにかく各俳優のなり切った演技が秀逸で、展開が生々しく伝わってくるところが素晴らしかった。この作品で主人公サキを演じる梅田さんと、少女を演じた高口さんは、その前の『雲の通ひ路』でも主人公とその少女時代を演じていて、しかも撮影順はこの『ビターズエンド』が先立ったこともあって、何とも面白い上映展開となった。最近のIPFの作品がヒロインアクションムービーに偏っている中、このタイミングで『ビターズエンド」のような“大人のファンタジー”が上映できたのは、良かったと思った。

 上映イベントとしてなかなかバランスのいい、いい意味で「現在の広島インディーズムービー界をshowする」ことができたのではないか、と思ったね(;^_^A