神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『アントマン&ワスプ』~究極の予定調和なハッピーエンドの果てに~

  『アントマン&ワスプ』を観てまず思ったのは、「これってヒロイン活劇じゃん」ってこと。確かに主人公であるアントマンことスコット・ラングは大活躍するけれど、メインキャラは、「アントマンスーツ」を開発したピム博士の娘ことホープが“変身”する2代目「ワスプ」と、謎の女性エイヴァ・スター(ハナ・ジョン=カーメン)のもう一つの“実体”の「ゴースト」であり、テーマも初代「ワスプ」のジャネット(ミシェル・ファイファー!)の“量子世界からの連れ戻し”だったりする。

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 今回タイトルに併記された「ワスプ」とは大型のスズメバチのこと。その名のごとく、ジャネットやホープが身に纏うスーツにも、アントマンのそれとは異なり、チャンと羽も生えてある。だから別に羽蟻に跨がる必要もない。よってそのスピードも行動力も、アントマンのそれをはるかに凌駕する。このワスプとアントマンのコンビは既に30年前、若かりし頃のジャネット・ヴァン・ダインとハンク・ピムによって結成されていたが、2人が発射されたソ連ICBMを阻止する際、量子レベルにまで縮小して任務を遂行したジャネットが、そのまま量子世界に取り残されてしまう。母親を救えなかった父親に対する失望と怒りが、長くピムとホープの親娘の間に深い溝を形成していたのだけれど、前作『アントマン』で、その量子世界からスコットが奇跡的に生還したことで、同じように母親を救えるのではないか、と色めきだった親娘は、そこから更なる量子トンネルの研究を続ける。しかし、『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』において、「ソコヴィア協定」反逆のキャプテン・アメリカ側に加勢したかどで、スコットは2年間の自宅軟禁、勝手にスーツを使われたピム親娘もその共犯者扱いでFBIから逃げ回る始末。彼らの研究が詰まった「ラボ」と呼ぶビルも、アントマンスーツの原理にも応用されているピム粒子によって実物大からスーツケース大にまで自在にサイズ変更して、一緒に移動させることに。

 本作では、ピム親娘の「量子世界からの母親奪回」と、テクノロジーの宝庫である「ラボ」の争奪戦が物語の中心であり、そこに「ラボ」を金儲けの道具にしようと暗躍する闇の武器ディーラーのバーチ(ウォルトン・ゴギンズ)や、前述の“ゴースト”、そして彼女を支える、かつてピムと袂を分かったS.H.I.E.L.D.の元職員・フォスター(ローレンス・フィッシュバーン)が絡んできて、この2つのテーマが多層に折り重なって物語が展開していく。その中でスコットは劇中『~シビル・ウォー』で魅せた“奥義”でもある“巨大化”を何度も見せてくれるものの、所詮はコメディリリーフ狂言回し的役割しか果たさない。実際ジャネットを救いに行くのはピムだし、表だって活動するのもホープの方だ。また、ヴィランといってもいい“ゴースト”ことエイヴァに至っても、幼少期に父親の量子実験のトラブルで両親を失った上に自らも細胞が分離する病に冒され、それに伴う特殊能力に目をつけたS.H.I.E.L.D.によって、制御用の特殊スーツを与えられた見返りに秘密工作員(兵器)として利用された悲しい過去を持つキャラクターで、「ラボ」争奪も自身の死から逃れるための苦肉の手段という、どちらかと言えば「悲劇のヒロイン」的な役回りを担っている。物語の中心にアントマンをおきながら、その廻りをそれぞれのキャラが縦横無尽に駆け巡っているような作品だ。

 劇中、ピム粒子によってあらゆるものが次々に巨大縮小を繰り返す面白さ(特にクライマックスのカーチェイスで効果的に演出されている)や、軟禁中のスコットの無断外出を如何にFBIに悟られないようにするかの駆け引きの破天荒ぶりや、前作で巨大化したまんまの蟻の奇妙な擬人化や、スコットのムショ仲間・ルイス(マイケル・ペーニャ)がバーチの手下が投薬した“自白剤”によって逆に能弁になり、核心とは関係ない与太話まで饒舌に延々と語り続けてしまうじれったい馬鹿馬鹿しさも相まって、MCUの前作『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー』の絶望感を払拭してくれるような楽しさに充ち満ちている。しかも、失敗もしくは片方しか生還できないであろうと思っていたピムとジャネットがどちらも無事現実世界に戻って来られたし、その量子世界で特殊能力を身につけたジャネットによって、エイヴァの病まで一時的にとはいえ克服でき、無断外出がばれないままスコットの軟禁生活も“年季明け”して愛娘キャシーの元へ行けるようになるなど、予定調和もかくや、というくらいの“ハッピーエンド”を迎えることとなった。個人的にはこんなラストが大好きだし、往年の大スターであるマイケル・ダグラスとミシェル・ファイファーが、お互いCGで若かりし姿まで披露しながら、この種のテーマの作品に登場するのも、『~シビル・ウォー』のロバート・レッドフォード同様、驚きと感動を覚えてしまったよ(^^)

 ただし、究極のハッピーエンドの果てに、最後の最後で『~インフィニティ・ウォー』の結末とリンクしてしまうとは………!(ノ_-。)
 

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