神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『パシリム2』は所詮『环(王へんに不)太平洋:雷霆再起』だったか……

 公開前からずっと気になっていた“パシリム2”こと『パシフィック・リム アップライジング』だが、生憎劇場での観賞が叶わず、ようやくこの度リリースされたDVDで作品を観ることができた。観賞後の感想はいろいろあるんだけれど、一言で言って、「嗚呼、制作会社のレジェンダリーは、中国資本の傘下に入ってしまってたんだよなぁ」って感慨がまず脳裏を掠めたね……所詮は太平洋:雷霆再起』なんだってねヾ(--;)

 物語は、前作の10年後、かつての“カイジュウ”による侵略戦争の痛手から復興途上にある人類が、再び異種族「プリカーサー」からの攻撃に対処する、というものだが、前作の前日壇も含めた数年にも及ぶ消耗戦から考えると、今回はストーリーの中でことが起こり、そして解決する、というショートレンジの展開で、テンポがよい反面、意外とあっさりしていたように感じた。

 当選今回も“カイジュウ”による侵略なんだけど、その前に、ありがちな「対“カイジュウ”兵器『イェーガー』」を無人遠隔操作し、かつ大量生産するという、この手の映画ではありがちな“いかにもヤバい”計画が、それを危惧する現場の意見に耳を貸さず、大資本のゴリ押しで推し進められ、案の定“カイジュウ”登場以前に、人類を窮地に陥れる。その計画の旗振り役が、場違いなほどの美人社長・リーウェン・シャオ(ジン・ティエン)率いる、上海に巨大な本社ビルを置く「シャオ産業」。つまり今回の事件を引き起こすのが、制作会社レジェンダリーを傘下に置く中国資本のお膝元なのである。ネタバレになるが、前作の橋渡し役の一人である、菊池凛乎演じる森マコが、シドニーで謎のイェーガーオブシディアン・フューリーの攻撃で殉職した際も、「この件は(自社企画の)ドローン・イェーガー配備の追い風になる」とほくそ笑むリーウェンはいかにもヒールで、「もしや彼女らは“プリカーサー”と内通している人類の裏切り者では」と思わせるキャラクターで、「おいおい、スポンサーの中国サイドを悪役にして大丈夫か?」なんて逆に不安がらせるものの、件のリーウェン社長、途中からいきなり正義のヒロインに転じてしまう。本当の悪役は、ホント思いも寄らない人物で(後から思うと伏線は張ってあったんだけど、やはり意外すぎた!)、そこら辺の意外性は脚本の勝利だと思うんだけど、リーウェン社長の豹変は唐突感が拭えなかったし、ここら辺に実はしっかり資本の中国に“忖度”してるな、って思ったね。

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 他にも、最終決戦の地となる東京の描写がメチャクチャで、東京を象徴する建物は皆無だし、危険を告げる街中の電光掲示板は中国語だし、東京の真裏に富士山が聳えていたりと、昨今のハリウッド映画でもお目にかかれないくらい杜撰な描写だった。例え中国資本だからといって、街中の漢字の看板や電光掲示名まで中国語の“不自然な”東京を見て、果たして中国人は喜ぶのだろうか。同じことは、例え日本資本の映画だからといって、上海の都市の看板が日本語だったら逆に興ざめするのと同じだと思う。まあ、我々が「アメリカ人」と「イギリス人」の区別がつかないように、「日本人」「中国人」「韓国・北朝鮮人」の区別なんてアメリカ人には見分けがつかないだろうから、こんなことになったのかもしれないけど、もしこれが“忖度”によるものだったら、いっそ最終決戦の場所は無理に東京ではなく、上海か香港にすれば良かったんだよ。ここら辺のディティールの杜撰さは、やはり今回“往年の日本特撮アニメLOVE”の前作監ギレルモ・デル・トロが、今回は制作にしか関わっていないことも影響しているであろう。尤もストーリーにはしっかり関わっているとは思うが、富士山が活火山って設定は、恥ずかしいぐらい無知以外の何物でもなかったよ。もしかして、日本特撮映画の『日本沈没』……否、『大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス』を観てて、富士山が活火山って勘違いしてたのかなぁ……(;^_^A

 ストーリーそのものは、如何も往年の日本特撮・アニメファンの好みそうな"ありがち"な展開だったし、森マコの殉職もよくあるパターンの一つだったと思う。続編としてまずまずの内容ではあったが、『男たちの挽歌Ⅱ』『エクスペンタブルズ2』『ランボー怒りの脱出』『ゴジラvsビオランテ』『ガメラⅡレギオン来襲』『アウトエイジビヨンド』……と「2(続編)」好きの私にとって、前作の出来から期待していた割には、今ひとつの内容だったかな。前作とは違って、基地の至る所に書かれた漢字が悉く中国語だったり、司令官を含めやたら中国人俳優で固めていたり、森マコ(菊池凛乎)の扱いがぞんざいだったり、折角昼日中の戦闘シーンなのにやたら動きや撮り方が速くて重量感が乏しかったり(この点は同じ昼日中の巨大ロボット戦闘シーンを描写した邦画の『ブレイブストーム』の方が、予算的には明らかに少ないはずなのに、よっぽど素晴らしかった)等々、いくつも不満が残った。

 一応予定調和のハッピーエンドで終わったが、「この次はお前の星に攻め込んでやる」とうそぶく主人公の台詞は、本作がアメリカと中国によって制作されたことを考えるとゾッとする……

 もう次はないと思うけど、もし実現するならば、是非再びギレルモ・デル・トロにメガホンを取ってほしい、と切に願ったね。