実は凄い! 「東宝チャンピオンまつり」再編集版!
さて、件の「東宝チャンピオンまつり」バージョンといえば、戦争映画や「若大将」「クレージーキャッツ」などの映画を併映にしていたことからわかるように、本来あらゆる層をターゲットにしていたはずの当時の特撮映画を、子供向けに再編集したもの、というのが定説だ。そこには、オリジナルをそのまま再上映してはいけないなどの、興行主との兼ね合いで敢えて再編集せざるを得なかった、という当時のルールがあったとも言われているが、いずれにしても、大人も意識してしっかりしたテーマ性を持った東宝特撮映画を、無理矢理“お子様ランチ”にしているような気がして、特に20代辺りの頃には全否定していたものだった。しかし、この再編集バージョンを別に“子供向け”と批判するのではなく、逆にテンポの良い娯楽作品に作り替えた、と思えば、それはそれでアリかな、って思うようになってきた。

さて、この『キングコングの逆襲』の場合、驚いたことに、オリジナルの104分に対して、チャンピオンまつり版は何と58分! ヘタをすればほぼ半分をカットしたことになる。そこで同じディスクにあるオリジナルと「チャンピオンまつり」を比較してみることにした。

すると、オープニングから北極で悪の天才科学者・ドクターフーの作ったメカニコングがエレメントX掘削中に付近の磁場によって故障するシーンまで、オリジナルの13分に対して、チャンピオンまつりは僅か7分。更に航行中に故障した潜水艦がモンド島に停泊し、乗組員の主人公3人がキングコングに遭遇し、その後コングとゴロザウルスの死闘を経て、命からがら潜水艦に乗り込み、島を抜け出すまでがオリジナルの33分に対してチャンピオンまつりが15分、といった具合。全編を通じて半分サイズにしているのだから、これぐらいの時間経過になるんだろうけど、その間、チャンピオンまつり版では、潜水艦での主人公の会話や、北極での某国エージェント・マダムピラニアとドクターフーのやりとりが極限まで切り詰められていて、編集上辻褄が合わないところはカットした風景インサートにセリフをかぶせて上手く繋ぐといったまさに職人技が冒頭から成されている。またコングから逃れて洋上に出た主人公たちが突如現れた大海ヘビに襲われ、それをコングが助けるも、コングが潜水艦を掴んで離さず、結局スーザンの説得によってようやく艦から離れていく、というシチュエーションがばっさりカットされていた(海ヘビ君哀れ!(;^_^A)
それまで、この手の「チャンピオンまつり」再編集は、数シーンをぶつ切りのように取り去る荒削りなものだと思いこんでいたが、実は細かい編集によってストーリー展開に支障がないような繊細な配慮がされていて、まさに「再編集」の名に恥じない作りになっていた。いくら単純明快なストーリーだったからといって、物語を半分以上「切って」なおかつそれで問題なく観客に魅せられるなんて、職人芸の何者でもない!(;^_^A 同じように映画を創って、勿論編集もやっている自分にとっても、実に刺激的な“職人技”に映ったね(;^_^A 勿論『キングコング対ゴジラ』本編や『怪獣総進撃』予告編のようにその編集過程でオリジナルネガを紛失するなんて行為は言語道断なんだけれど、オリジナルを傷つけずきちんと保管した上で、別バージョンとしてこんな短縮再編集版を作るってのは、とても面白いと思った。ただその過程において、例えば監督の本多猪四郎監督に無断でオリジナルに鋏を入れる(実際あったらしい)などといった“原作者”をないがしろにするような行為は厳に慎むべきだけど……。
それにしても、短縮版の編集って、誰がやってたんだろう。もしオリジナルの編集者でなければ誰が……?