伊丹監督のダイナミックな演出を垣間見て

まず、何といっても、小気味よいというか、ぐいぐい観客を引き込んでいくパワーとテンポが秀でている。ストーリーは、落ち目のスーパーが、ある日店長の級友である女性の参入によって、徐々に発展していき、ライバルの安売り店と競う、という、極めて単純明快のもので、伊丹監督作品に欠かせない、夫人・宮本信子が、ここでもタイトルに違わぬ"スーパー"な女をエネルギッシュに演じている。
内容も、その単純なストーリーの中に、「スーパーマーケットあるある」なネタを満載し、しかも我々が日頃見ることも叶わない舞台裏を、ドラマのシーンの一部として映し出し、そこでも小さなドラマが進行していく、という展開は、見ていて観客を飽きさせない。そんな映像・演出に触れると、映画撮ってるものの悪い癖で、つい人目も憚らず「上手いなぁ」って訳知り顔で呟いてしまう(;^_^A
唯一最初から最後まで観届けた『タンポポ』も、ストーリーとは別に、「食」にまつわるいくつもの(本編tpは直接絡まない)ショートストーリーが幾重にも重なり合い、作品世界に彩りと深みを与え、やはり観る者を決して飽きさえない見事な構成になっていた。これこそ、観る者をいかに楽しませるかに腐心した、エンターティナーの演出だといえる。
こういった王道のダイナミックスさや外連味が、いつも書くけれど、最近の邦画ではなかなか描かれにくくなってきたんじゃないかな。『シン・ゴジラ』のようなダイナミックスさとはまた違った、パワフルな人間くさいドラマ……そんな映画もたまには観てみたいね(;^_^A