神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『シン・ゴジラ』 ~キャスティングの妙に迫る~

 まだ『シン・ゴジラ』“第二観賞”の余韻に浸っている(;^_^A

 さて、本作のキャスティングについてなんだけど………これはほぼ完璧と言っていい布陣だったと思う。ストーリーの大半を占める内閣シーンでは、“小池百合子完コピ”の余美貴子は言うに及ばず、老獪な演技で歴代官房長官像をすべて網羅したような柄本明、“リアル元国会議員”の横光克彦等々、どこかしら近現代の政権をデフォルメしたようなメンバーがそれなりの演技・リアクションをしてくれて、なかなか面白かった。中でも、今までならば「山村聰」「丹波哲郎」「小林桂樹」ら重鎮の役どころであった内閣総理大臣役に大杉漣を抜擢したキャスティングの妙には舌を巻いたね(;^_^A  かつて日活ロマンポルノの『地下鉄連続レイプ』で組から麻薬を強奪し、行きずりのホステスを拉致監禁してシャブ漬けにするという極悪非道の冷酷なヤクザを演じた彼が、やがて気の弱い親父や職場の上司などでキャリアを積みながら、ついに日本の最高権力者に上り詰めたのは、昔から彼を知る者としては感慨深い。キャラ的にもさして実力もないまま“担がれて”首相になったような、虚勢を張りつつもここぞと言うときには判断力に欠ける頼りない総理大臣ぶりを嬉々として演じていたようだ。また、長谷川博巳演じる矢口蘭堂内閣官房副長官は、どうしてもかの「人生いろいろ」元首相の七光り議員のキャラとダブって仕方がなかった。もっともオリジナルには矢口ほど腹をくくる度胸はないだろうけど……(;^_^A  逆に竹ノ内豊演じる赤坂秀樹内閣総理大臣補佐官は、今の内閣にこのような人物こそ存在してほしい、と思わせる“スーパーマン”的(あくまで執務が万能という意味で)なキャラだった。

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 巨大不明生物特設災害対策本部巨災対)の方は、もう有象無象のキャストが入り乱れている。もともとモデルがいないだがらやりたい放題。環境省自然環境野生生物課長補佐(長い……)の尾頭ヒロミ役の市川実日子(『キューティハニー』)が抜きん出てキャラが立っているが、彼女のクールさに、威勢はいいがちょっぴり人情派の森厚生労働省医政局研究開発振興課長(これも長い……)を演じる津田寛治や、その存在自体インパクト大の間国立城北大学大学院生物圏科学研究所准教授(…以下同文……)役の塚本晋也など、バラエティーに富んでいる。また内閣・巨災対にいえるが、庵野映画の常連もそれとなく名を連ねていて、従来のこの手の怪獣映画・パニック映画にない、実に新鮮かつ大胆なキャスティングがなされていた。

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 他にも、掃除のおばさんで『キューティハニー』の片桐はいりが、陸自戦車隊の隊長役で今をときめく斉藤工が出演しているが、登場シーンが僅かなだけに実に贅沢な作り方をしていると思ったね。聞くところに寄ると、『シン・ゴジラ』撮影当時は、日本から俳優が殆ど持って行かれていなくなった、なんて噂もあったし(;^_^A  でも最大のサプライズは、何といっても牧博士役でスチール出演している故岡本喜八監督に尽きる! こんな所業が出来るのも、庵野総監督ならではのことだろう(;^_^A  実際劇中「まさか?」と思い、エンドクレジットでその名前を見つけて興奮したことを今も思い出すね(;^_^A

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 で、問題のカヨコ・アン・パタースン米国大統領特使だが……これだけ“リアル”に徹してきたのに、このキャラだけ実に“ファンタジー”だ。以前も書いたが、アニメならば許される設定で、これを生身の人間にやらせるならば、『八月の狂詩曲』でのリチャード・ギアのように、生粋のアメリカ人(それも設定上白人かな?)に演じさせなければ説得力はない。だから非常に悩んでしまうところなんだけど、敢えて東洋人に演じさせるならば、これまた石原さとみ以外あり得なかったかもしれない。あの顔での精一杯の“ツンレデ”演技がやけに愛くるしい(;^_^A  時折見せる英会話の中の「ゴッズィ~ラ」を「ゴジラ」と言い換える所も萌えたね(;^_^A  設定自体がちょっと可哀相なキャラだったけど、それなりにいい味を出していたと思う。

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 とにかく、とかく“イロモノ”扱いされる怪獣映画に、しかも映画界では“異端”の部類に入る庵野秀明総監督に、これだけの俳優陣と資金を惜しげもなくつぎ込んで、しかも今までにない大胆なキャスティングを認めたんだから、この『シン・ゴジラ』に賭ける東宝の並々ならぬ熱意と覚悟が感じられて、ここ最近の東宝とは違った新しい東宝の気概に嬉しくなってしまったよ。

 ここで「東宝は“新東宝”へ」なんて書いてしまいたくなるけど、「新東宝」は既に存在している映画会社なんて、そう言うわけにもいかないなヾ(ーー )