神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『けんか空手 極真拳』

 我々の世代では知らない者がいないくらい有名なのが“マス・大山”こと「極真空手」の大山倍達(“ばいたつ”ではない、“ますたつ”!)だろう。死してなお「極真」の名と共に絶大なる影響力を誇る大山倍達の青春期を描いたのが『けんか空手 極真拳』だ。

イメージ 1

 主演は“ソニー”こと千葉真一! まさに彼にうってつけのアクション巨編に仕上がっている。しかもテーマから“実写版「空手バカ一代」”の様な内容かと思いきや、ストーリーが破天荒すぎ、ある種“マス大山ファンタジー”とでも言うべき代物に仕上がっている。

 話は、山中での単身修行を終えたマス大山こと千葉ちゃんが、京都の空手道大会に飛び入り出場し、まんまと優勝をかっさらってしまうが、寸止め全盛の空手世界に異を唱えたのがきっかけで大御所・中曽根(成田三樹夫!)の逆鱗に触れ、以後邪道とさげすまれながら不遇の生活をスタートさせるところから物語は始まる。それから「空手バカ一代」同様彼に弟子入りする狂犬のように強い有明(千葉治郎!)との交流や、米軍相手のパンスケと勝手に誤解した上強引に奪った後の大山夫人・藤巻智八子(多岐川裕美)との奇妙な関係を経ながら、つかの間のささやかな平安を手にするが、修行中に突如現れた猛牛との死闘や、その武勇をさげすんだ同級生(しかも中曽根の門下)を半殺しにして収監された弟子・有明の脱走及び射殺という悲劇を通じて、再び世間の渦に巻き込まれてしまう。その果てに、友人のバーに殴り込んできたチンピラ・仁科(室田日出男!)を酔った勢いで撲殺してしまい、正当防衛が認められたものの、仁科の妻と子供から散々さげすまれて、彼女らに「この両腕を切り落としてくれ」と土下座する始末。

イメージ 2

 本作の大山倍達は、とにかく武道家らしからすナイーブで、常に悩んでいる。自分が認められないことに悩み、智八子に藍を受け入れてもらえず悩み、有明の非業の死に悲嘆し、挙げ句に過失でチンピラを死なせたことに心底落ち込んでいく。ここら辺りがなんとももぞかしく、アクション映画ながら観ていられないほど痛々しかった。やがて、彼は「もう空手を捨てる」と宣言し、チンピラの妻子が暮らす田舎の山中に赴き、彼女らの拒絶に合いながらも、2人のために黙々と荒れ地を開墾し、立派に栽培できる畑をこしらえてやる(このプロセスでわざわざ畑に肥を巻くシーンまで出てくる。これは脚本の鈴木則文御大の意向だろうか……(;^_^A)。その頃になると、最初は彼に憎悪していた妻子も心を開くようになる。そして、先の空手道大会決勝で大山に負けた武道家・南部が彼に決闘を迫りわざわざこの地を訪れたものの、妻子との約束で南部と戦おうとしない大山を見た2人は、逆に彼に「空手を再開して」と懇願する。それで贖罪を果たしたと感じた大山は、いよいよ全てのけりをつけるため山を下りる決心をするが……ここから今までの停滞が嘘のように、一気に怒濤のアクション展開になっていく。

 妻子の家を出た瞬間、彼を待ちかまえていたのは、中曽根が放った刺客・長ドス使いの剣鬼(今井健二!)だ(こんな刺客を送り込むなんて、中曽根もショッカー並みに卑怯な男だ!)。しかし空手を許可されて精気を取り戻した大山の敵ではなく、あっと言う間に返り討ちに遭ってしまう。しかも彼の今際の台詞から依頼者が中曽根であることを知った大山の怒りはマックスに達し、中曽根の道場に殴り込んで、彼に果たし状を送る。

 卑怯な中曽根は、果たし合いの場に幹部と60人の門下生を引き連れ“超ハンディキャップマッチ”を大山に挑むが、一面の草原に身を隠しながら接近してきた大山に意表を突かれ、幹部もろともあっけなく殴り殺されてしまう。驚いた門下生たちも次から次へと大山の餌食になっていくわけだが、このシーンでの千葉チャンのアクションが半端なく、間違いなく“和製ブルース・リー”の称号を、倉田保昭先生を差し置いて与えてもいいくらいの八面六臂の活躍だった。ホントここのシーンは『燃えよドラゴン』の後半の地下倉庫での一代アクション(ハンの配下を片っ端からたたきのめしていく場面)に匹敵するド迫力だ(;^_^A

イメージ 3

 最後は宿命のライバル・南部を倒してそのままエンドマークが出るという“香港テイスツ”な終わり方をするが、ラストまでの20分間を見ただけで、まあ満足、っていった内容だったよ(^^)

 他にも、大山が下宿する「小嶋テーラー」の主人(由利徹!!!)がやけに男色っぽかったり、千葉チャンと有明役の千葉治郎“兄弟”が抜けるような青空の下、浜辺で上半身裸になって共に空手の型を演じるシーンなどは、健康的な筋骨隆々な姿がある種その手の趣味の方の“サービスカット”だったのかな、って思わたり、と奇妙なシーンも多かった(;^_^A そういえば、直後場渡り的に発生する千葉チャンと暴れ牛の決闘シーンでは、その後撲殺されて横たわる牛が本当に死んでいるのかただ寝かされているのか判らないものの、「この後この牛はスタッフキャストでおいしく戴きました」なんてテロップがでそうなカットだったよ(;^_^A

イメージ 4

 そうそう、本作にはオープニングタイトルに「大山倍達」「梶原一輝」「真樹日佐夫」と大きくテロップされるが、どうもこの3人はそのオープニングの極真会員による打ち込みのシーンでそれぞれ1カットずつ登場した、僅かそれのみの主演だったようだヾ(ーー )