神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『ガッチャマン』   行きがかり上「科学忍法火の鳥」

 実写版『ガッチャマン』をようやく観た。公開前から何かと批判の対象となる「不遇な作品」というイメージが強い。その矛先の多くは、白鳥のジュンを務めた剛力彩芽に向けられているようで、「プロダクションのゴリ押し」キャスティングとの理不尽な批判が目に付く。また作品世界に関しての批判も多く、とある評論家は「100点満点中4点」との身も蓋もない評価を下していたりする。
 
 そんな“雑音”の中、「怖いもの見たさ」で本作を観賞したのだが、その感想ははっきり言って、残念ながら大いに不満の残るものだった。かといって前述の理不尽な批判が当たっていたか、というとそうは思わない。ただ、何ともいえない“ズレ”が、本作を悔いの残る作品にしてしまったのではないか、と思っている。
 
 登場するキャストに関しては、剛力彩芽以外の科学忍者隊の面々はなかなか適材適所の配置だったと思うし、南部博士役の岸谷五朗に至っては“和製ニコラスケイジ”の称号を与えても好いくらいの成り切りぶりだった。件の剛力彩芽嬢も、別にジュン役に値しない(つまりゴリ押しのアシストが無ければ役をもらえない)ほどの演技力やキャラクターでは無かったと思うが、ただ“適材適所”でなかった点が悔やまれる。以前当ブログでも掲載したが(剛力彩芽と“白鳥のジュンhttp://blogs.yahoo.co.jp/jinguji_ipf_s1986/25731450.html)、G3=白鳥のジュン役は、ボーイッシュな剛力よりも、もっと背徳的な(つまり邪な)色気を醸し出す女優にこそ演じてもらうべきだったと思う(もっとも、“ファンタジー”ではなく“実戦リアル”としてのG3ならば剛力でOKだろうけど……なぁ)。それと、他の4人と異なり、オリジナルとは似ても似つかぬG3のコスチュームをデザインした美術と、それにGOサインを出した監督・プロデューサーには猛省を促す。あれはない。全く『ガッチャマン』を判っちゃいない!
 
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 過去の作品をあえてリメイクするときのメリットは、正直当時のファンを取り込むこと。だいぶ前に和田勉監督の『ハリマオ』が制作されたとき、リアルタイムで『ハリマオ』を観てなかった自分としては全くこの企画・作品に食指が動かなかったように、今の若い世代に今更『ガッチャマン』と言われてもピンと来ないしその層の観客動員に影響も与えなかっただろう。それでも敢えて旧作のリメイクをするならば、井口昇監督の『電人ザボーガー』のように、うんとオリジナルのファンにおもねった作品にすればいい。そういうものもなく、逆にオリジナルにチンプンカンプンな層におもねったキャスティングを配した今回のこの映画は、両方の層からの動員を狙いながらそのどちらの層からも総スカンを食らってしまう結果に終わったようだ。これもまた自明の理である。
 
 キャストは頑張っている。特撮(CG)もハリウッド的にゴチャゴチャして不快ながらまあなかなかの出来。そういう意味では役者・技術者に罪はない。全て、そんな“ボタンの掛け違え”を“ゴリ押し”してこんな映画をこしらえた、オリジナルに対するリスペクトが感じられない制作・演出側にこそ、罪がある。
 
 それと、演出だが、特にクラインマックスを観ていて、何ともいえないじれったさには閉口した。あと7分で東京が壊滅してしまうという一大事に、隊員内の恋のさや当てなんてやってる場合じゃないし、壊滅2分前に至るまで、つきあっただの奪っただの裏切っただの、下世話な三角関係をくどくど語ってるって何? 主人公たちがなかなか敵キャラを倒せずグダグダと戦闘シーンが続くのも却ってだるいし……肝心のカタルシスが味わえない展開だった。
 
 この間隔って、日頃路上でいつも遭遇する、信号が点滅しているのに、横断歩道をスマホを観ながらだらだら横断し、赤になってもお構いなしな輩を観ている時のじれったさに近いものがあった。もっと急げよ、横断歩道も映画のクライマックスも!
 
 オリジナルといえば、“科学忍法竜巻ファイター”は劇中無かったんじゃないかな。オリジナルの究極の必殺攻撃である“科学忍法火の鳥”も、要塞脱出時、“行きがかり上”起きたに過ぎない。もしオリジナルにリスペクトがあったならば、要塞突入時、バリア突破のシーンで絶対出すでしょう。
 
 ローランド・エメリッヒ版『GODZILLA』と同様、本作品を『ガッチャマン』の実写リメイクではなく、オリジナルの戦隊シリーズとして観たならば、そんなに目くじらを立てずに普通に観られたかもしれない。「リメイクはあらゆる層を動員できる」なんて妄想から邦画界もそろそろ目を覚まして、きちんとしたオリジナル作品を撮るか、動員層を限定した上でオリジナルのファンを唸らせる“混じりっけ無し”のリメイクを創ってほしいね。