神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『他人の星』の哀しきクールビューティ

 先月の「ウルトラセブン展」に偶然入場できた件(http://blogs.yahoo.co.jp/jinguji_ipf_s1986/26458015.html)から、昨日の「交響詩ウルトラセブン」鑑賞及び冬木透氏対面に至るまで、ここ最近“映画の神様”に何度も微笑んでもらって、やたら「ウルトラセブン」づいている感があるが、今日はその「セブン」を本来の“ヒロインネタ”で書いてみたい。
 
 ウルトラセブンの第37話「盗まれたウルトラアイ」……このタイトルを聴くと、何とも切ない思いに駆られる。稀代の脚本家にして、メインライターを務めた「ウルトラマンA」では、「邪悪な存在が平和の象徴を破壊する」オープニングを考え、第一話では超獣ベロクロンを当初広島市に登城させ“原爆ドーム”を破壊するシーンを脚本に織り込んでいた市川森一氏。何でもまだ初期の頃に執筆した脚本だったようで、このエピソード(およびいきさつ)は、かつてNHKがドラマ化した「私が愛したウルトラセブン」でも、多少フィクションも交えていたようだが、前半のドラマの中心になっていた。
 
 さて、本作は、「地球は狂った星であり存在に値しない」と判断したマゼラン星人による、地球破壊工作(文字通り巨大ミサイルで地球そのものを破壊する)の先兵として派遣されたマヤが、やがて母星から裏切られた真実を知り、ウルトラセブンや警備隊の活躍で地球破壊は阻止されたものの、「狂った地球では生きていけない」とばかりに、自らの手で死を選ぶ、という何ともやるせないエピソードである。
 
イメージ 1
 
 リアルタイムで「セブン」を見ていた頃、そして小学時代何度となく再放送で見ていた頃も、本作を意識した記憶ははほとんどない。敢えて学生時代の“特撮ブーム”の際に、再放送で初めて本作に触れたような気がする。そして物心ついてからの観賞故、痛く感激し、かつ切なさばかりが残る作品だった。
 
 ところで、件のマゼラン星人・マヤだが、おそらくその本体であるマゼラン星人としての姿は全く見せず、ずっと地球人(それもアジア人)の少女として登場するのみである(もしかしたらマゼラン星人は地球人と同様のヒューマノイドだったのかも……)。もっともシルバーっぽい白のミニワンピースに白のブーツといった、当時としても実に浮き世離れした出で立ちではあったけれど。しかもその容姿のまま、時としてダンプを運転し、また機関銃を撃ちまくる、など、イメージとはかけ離れた行動をとったりもした。ただ、ストーリーの展開上、途中で彼女は裏切られて、母星からの救出が来ないことはすぐに見て取れ、それ故、地球破壊工作が失敗するのは目に見えていたれど、彼女の喪失感を思うと、全編が暗いトーンに包まれた、そう感じたストーリーでもあった。
 
 ちなみに、そんな“哀しきクールビューティ”を務めた吉田ゆり、という女優。当時、高校2年生でこの役を務めた、というから恐れ入る。まあ所々ぎこちなさはあったけれど……そこが逆にクールビューティぶりを醸し出していたから、それはそれでよかったと思う。それと、本作はもともと「他人の星」というタイトルで放映される予定だったらしいが、本作で印象的に流れる哀愁のバラードの曲名に、そのタイトルが残っているのだそうだ。