神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「鬼婆」は広島発清純派ヒロイン?

 今日は節分。節分と云えば「鬼」。そこで「鬼」ヒロインに思いを馳せてみた。かといって安易にメジャーな鬼(雷?)娘こと「うる星やつら」のラムに敢えて触れたりしないのが、当ブログ“神宮寺真琴のつぶやき”である そんなわけで今日の話題は、新藤兼人監督の、その名もズバリ『鬼婆』である
 
 
 私の大好きな新藤作品『裸の島』で哀感あふれるテーマを作曲した林光氏の手による、あまりにも刺激的なテーマ曲にまず圧倒される。南北朝時代、戦に駆り出された夫を待つ嫁と姑の2人組が、落ち武者を襲っては殺し、身ぐるみはいだ甲冑や武器を売りさばいて生計を立てる、という、全く潤いのない共同生活。そこへ夫(息子)の仲間であった若い男が転がり込んだからたまらない。嫁は男の誘惑に負け、今にもこの殺伐とした共同生活から離脱しそうになる。そこで見捨てられては困るとばかり、姑は夜な夜な鬼の面をかぶって二人を威嚇、この場に止まらせようと画策するも、件の鬼の面が姑の顔から離れなくなってしまい……というドラマが進行していく。
 
 主人公である嫁を吉村実子、姑を乙羽信子が演じ、若い間男役はなるほどの佐藤慶が務めるという、キャスティングの妙が光る作品だ(冒頭の餌食になる落ち武者の一人が、『キングコング対ゴジラ』において「当方共倒れ、それが付け目です」の名台詞を吐いた大貫博士こと松井染升とこの度知ってこれも驚き!)。そんな中で、ドラマのキーワードを務める乙羽信子のメイクが凄い!
 
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 まるでとってつけた漫画のようなどぎつさだ これならば鬼となっても不思議はないな 『鬼畜』で夫人の岩下志麻を文字通り“鬼嫁”に演出した篠田正浩といい、監督は配偶者にここまで強烈なキャラを求めるもんなんだろうな。
 
 それにしても、彼女は元々は“タカラジェンヌ” 本作の12年前には『原爆の子』で、清純派そのもののヒロインを演じていた。それも“清純”と“良心”の二つを兼ね備えた無垢なヒロインとして。
 
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 『鬼婆』公開年に生まれた私にとって、乙羽信子はいい意味で「おばさん(おばあさん?)」俳優だった。いい大人になってから、彼女が『原爆の子』と『世界大戦争』という因縁めいた作品に出演していたり、『裸の島』をはじめ、新藤監督つながりで広島にも縁深い女優であることを知った。かつては清純派アイドルだったことも……
 
 ようやく夫の新藤兼人監督も訪れたことだし、天国で再び「近代映画社」を作って、バンバン映画を撮ってほしいな。私ももうすぐそちらに行って、観賞したいと思う。
 
 もっとも天国に行けるかな……