“奇跡のソフト化”
今まで“死ぬまでになんとか観たい”“死ぬまでになんとかもう一度観たい”と心から切に願いながら、「おそらく無理だろう」と諦めていた邦画が2本あった。
まず“死ぬまでになんとか観たい”と願った映画はこれ。
石原プロ制作の『ある兵士の賭け』。石原プロが巨額の制作費をつぎ込みながら、邦画斜陽の中、興行的に惨敗して石原プロの屋台骨を揺るがし、結果、映画に並々ならぬ情熱を注いでいた石原裕次郎を渋々TVの世界に向かわせた曰く付きの作品だ。
勿論、公開当時幼少期だった私がこの作品を鑑賞する機会もなく、裕次郎の逝去後、当時のNHKBS2が組んだ裕次郎特集の中で初めてこの作品の存在(あくまで存在のみ)を知った。以後、なんとか観たいと思いながらその願いは叶わず、かれこれ十年以上前にツアーで北海道旅行に行った際、小樽の裕次郎記念館で、小型の画面から流れる本作の予告編に触れられて、それだけでいたく感激したのを覚えている。
続いて“死ぬまでになんとかもう一度観たい”と思っていた作品はこれ。
初見は高校1年生の時。広島ホームテレビ(テレ朝系)で放映されたのを鑑賞した。そして興奮した。圧倒された。何の予備知識もなくいきなり観た故、また観たいと切に願った。尤も当時は、やがてこの作品が門外不出の“幻の作品”になるとは思いも寄らなかった。
「この映画はスクリーンで見せるモノだ」との裕次郎の遺言を渡哲也・石原まき子をはじめ、石原プロの面々が頑なに守ってきた結果、DVD化など望む術もなく東京近郊でも富山(黒部)でもない広島に住む私が観る機会は永久にないだろう、と諦めていた(ただし「ソフト化拒否宣言」を高らかに掲げていたはず『追悼のざわめき』さえ、奇跡のDVD化がなされたことを考えると、いつかは、と密かに期待していたのは事実だけど……)。
それが昨年になって、チャリティーを兼ねて、全国各地で『黒部の太陽』を公開することが決定した。小躍りするほど嬉しかったね。しかし、何という運命の皮肉か、その前年“奇跡”の全国大会切符を手にした放送部の、その全国大会日程と『黒部の太陽』広島公開日が重なってしまった。しかも全国大会の会場は黒部峡谷のある富山県! まさに運命の皮肉を呪ったね……丁度『黒部の太陽』が公開されているときに、皮肉にも大会用の現地取材でJR黒部駅の前を通過した。何とも複雑な思いで黒部駅のスチールを撮った。
だが話にはまだ続きがあって、それから数ヶ月後、今度は広島市から車で2時間程度の都市、三原市で『黒部の太陽』の上映会が行われることを知った。生憎平日だったが、何とその日は私の“人間ドック”の日。終日“職免”が適応されるし、しかも午前中でほぼ終わるので、そこから高速使って三原市にいっても十分間に合う算段だ。しかし、この日も急遽午後から“無給”出勤する羽目になって、奇跡の日程もあえなく頓挫。まあこれも“運命”と思って諦めたね。
ただ、この手の“ガセネタ”は頻繁に流れているので、眉唾モノで記事を読んでいったが……石原プロ肝いりの、どうも真実らしい。しかもこの記事は……3ヶ月前のことではないか! つまり『ある兵士の賭け』も『黒部の太陽』も既に市場に回っているということである。結局すぐに注文してしまった そして今、我が家には件の両作品の、ほんの一寸前ならばあり得なかったBDが並んでいる。
今はこの2作品の“奇跡のソフト化”を心から祝っている。
早速観てみたけど、その感想はいずれまた。