丘ユリ子 実務的な女性隊員像
私は“ウルトラマンジャック”という呼称がどうも承知できない。ご存じ“帰ってきたウルトラマン”の新呼称だ。故円谷皐氏による命名らしい。確かに66年版『ウルトラマン』との差別化を図る上で別の名が必要だったこともわかる。だが私の中ではやはり、『帰ってきたウルトラマン』もしくは“帰マン”“新マン”が歴史に根ざした正式な呼称であり、『ウルトラマン』は飽くまで“初代”と呼んで従来通りの差別化を図ればいいと思っている。
さて、“帰ってきた”と思わせぶりなタイトルでスタートした71年版『新ウルトラマン』。当時小学生だった私にとっては、前2作と異なり「物心ついて初めて観たウルトラヒーロー」ということで特に思い入れが深い。少年誌に掲載された二重ライン模様の新マンの絵を何度も何度も描いたこと、外での遊びに夢中になりすぎてシーモンスシーゴラスの回の後半を見そびれてしまったこと、セブンが登場すると期待していたベムスターの回が、旅客機墜落事故の緊急特番で翌週に日延べになったこと、ムルチの回のあまりにもえげつないむき出しの差別描写(当時は差別なんて言葉は知らなかったが……)に騒然としたこと、そしてそれ以降のストーリーを再放映まで殆ど覚えていなかったこと等々、当時の思い出は枚挙に暇がない。
その『帰ってきたウルトラマン』に登場する対怪獣組織・MAT(モンスターアタックチーム)。確か“地球防衛庁”の下部組織として位置づけられていたと記憶しているが、そのチームの紅一点が、丘ユリ子隊員だった。
主人公・郷秀樹の恋人役・坂田アキ(榊原るみ)というヒロインがレギュラーで登場する関係上、従来のフジアキコや友里アンヌといったような愛らしいキャラクターを隊員として設定する必要がないと判断したのか、丘ユリ子はどこか大人の女性というか、あたかも“職場でちょっと年上の、仕事が出来る女上司”といった雰囲気を醸し出していた。設定は19歳、しかも演じる桂木美加の実年齢も21歳だったことを考えると、あのある種近寄りがたく、決してチームのアイドル・恋愛対象といったイメージを起こさせない彼女の演技・オーラは凄いものだったのだと感心する。もっとも、実際の自衛隊などに所属する女性自衛官の雰囲気がまさにあんな感じなのではないか、と考えると、実にリアルな“対怪獣チームの実務的な女性隊員像”だったのだろうけど……
件の桂木美加嬢、ネットで検索してもあまり画像もなく、wikiの記載も少ない。ただ、本作以外にも『タロウ』や『レオ』に、共に教師役でゲスト出演していたり(結構お似合い 笑)、『血を吸う薔薇』では吸血鬼である学長夫人を演じたり、SF特撮に関わりが深い。しかし、現在ではその消息は知れないという。