神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

ハリウッドの寵児に「エクスペンダブル」されし者

 だいぶ以前に購入した、洋泉社の「モンスターメイカーズ―ハリウッド怪獣特撮史 (映画秘宝COLLECTION (12))」を久しぶりに部屋で見つけた。それもまだ“手つかず”の状態だったので、今徐々に読み進めている。

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 この本はハリウッドで活躍した(している)SFXマンを、『キングコング』のウィリス・オブライエンを筆頭に、体系立てつつ列伝の構成も交えながら解説しているもので、オブライエンの隆盛と末期、それに取って代わった弟子のレイ・ハリーハウゼンや、デニス・ミューレン、ジム・ダンフォース、デビット・アレン、リック・ベーカーといった現在おなじみのメンバーの活躍が描かれている。また彼らがどのような作品にどんな思いで関わったのかとか、どんな企画を考えていたのかなどの情報も時系列で描かれているので、とてもイメージしやすく、あたかも彼らの成長していく様がうかがい知れる内容になっている。中でも、ディノ・ラウレンディス版『キングコング』制作を巡る下りは、そのドロドロした裏事情を交え、実に興味深い。かのスピルバーグが、あの作品が全編「巨大ロボットコング」で撮られたと信じて疑わず(実際は殆どリック・ベーカーが自作自演した着ぐるみコング)、制作者のカルロ・ランバルディを『ET』のSFXに起用した仰天エピソードを知っているだけに、何とも“おマヌケ”で可笑しい。

 ところで、今はジョージ・ルーカスが『スターウォーズ』製作時に、その特撮を『2001年宇宙の旅』のダグラス・トランブルに依頼した際、彼から断られた代わりに、ジョン・ダイスクトラを紹介された下りを読んでいるんだけれど、一時はルーカスが立ち上げた「ILM」のリーダー的立場にあったダイスクトラが、本編を撮り終えた時点で特撮パートが殆ど撮れていないことに驚愕したルーカスによって、解任に近い形で現場を離れ、リチャード・エドランドにその地位を奪われたことが書かれている(一応この時の成果でアカデミー賞は受賞したらしい)。このことについては、それなりに察しがついていた部分なんだけど、そうなると、共に70年代以降の“ハリウッドの寵児”となったルーカスとスピルバーグに、奇しくも共に“使い棄てられた”ジョン・ダイスクトラとトビー・フーパー(『ポルターガイスト』)が、同じくルーカスとスピルバーグが『スターウォーズ』と『ジョーズ』でメジャーの現場に“横取りした”独立系のB級SF・パニック映画の“怨霊”の如きテイストの『スペースバンパイア』を共同で世に送り出したことは特筆すべきことである。しかも楽曲は数多の“オスカー”を受賞したヘンリー・マンシーニ渾身の一曲って考えたら、ある種凄い作品だと言える。

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 ハリウッドの寵児らに“エクスペンダブル”された全ての怨念が昇華した、あのようないかがわしくパワフルな生粋の「B級娯楽大作」が誕生したわけだ。