神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「天使」の故郷で……

 今日、高倉健御大の『あなたへ』を再見した。丁度数日前、健さんのドキュメントを観たこともあって、。過日の初見よりも、いろんな面で面白く拝見できた(^^)


 劇中、ほんの端役ながら印象深い演技を魅せてくれた石倉三郎は、実は生前の健さんに可愛がられていたそうで、その番組でも健さんの自伝の朗読役を務めていたが、そこでは健さんの意外に茶目っ気な部分も垣間見られて、実に興味深かった。また、小倉・東筑高校時代の級友の話によると、高倉健こと当時の小田 剛一青年は、多弁で社交的な性格だったそうで、アメリカに憧れてESS部を校内に立ち上げたり、貿易商を夢見て明治大学(お、たけしの先輩?!)に進学したものの、遊びに惚けて卒業しても就職に恵まれず再び帰郷したりと、映画の中でイメージする「高倉健」とはかけ離れた性格だったことが垣間見られて、何だか嬉しくなってしまった。

 彼のストイックながら一途なキャラクターは、自ら望んだわけでもないのにマキノ省三御大に見初められて映画俳優の道に進んだことや、そこでの数々の仕打ちに持ち前の負けん気根性が燃えて、意地でスターの座を勝ちとったことにあったらしい。75年の東映退社→フリーとなって以降の作品での迫真の演技から、いつの間にか周りから「神格化」されてしまった健さんだったが、彼自身、そんな評価をどのように感じていたか……少なくとも、いつまでも「求道」することを惜しまなかった点においては、ストイックだったのだと思う。また「神格化」されていたが故に、『あたたへ』での健さんがまさに、彼に関わる登場人物に図らずも癒しを与える「天使」然としていたことも頷けるところだ。

 そんな健さんの遺作となった本作のラストシーンは、北九州の門司港。本当は主人公が車で走り去るシーンがラストの予定だったが、健さんのたっての願いで、この門司港ロケになったのだそうだ。果たして、当時健さんが、自らの死期を悟っていたか、少なくとも本作が遺作にあるかも知れないということを感じていたかは定かではないが、改めて、彼の遺作のラストシーンが、故郷である北九州だった事実は、何とも感慨深い。エンドクレジットの背景で、門司港の町並みに消えていく健さんは、一体どこに向かっていたのだろうか………


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