神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『宇宙からの脱出』

 久しぶりに『宇宙からの脱出』を観た。初見が中学生の頃だったと思うが、その後も何度か観たことのある映画だ。尤も、今回初めてしっかり物語世界をしっかり“噛みしめて”観賞する事が出来た。

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 ストーリーは至ってシンプルで、緊急のトラブルで大気圏突入が出来なくなったアメリカ・アポロ宇宙船の乗組員を、自国の救助艇(ジェミニ宇宙船)とソ連(当時)のボストーク衛星が共同で救いに行くというものだった。勿論、本来ならば莫大な時間と予算と手間をかけるはずの(救助艇を打ち出す)サターンロケットが、僅か40時間で打ち上がる、という“ご都合主義”も甚だしい展開ではあるが、当時の“アナロニズム”の妙ともいこうか、グレゴリー・ペック、デビット・ジャンセン、ジーン・ハックマンといった重厚すぎるキャストの演技も相まって、意外と違和感なく受け入れられた。

 正直、公開が1969年ということもあり、CG全盛の今から考えると、特撮・合成の稚拙さは半端ない。誰が観ても「作り物」に見えてしまう。それでも物語世界に引き込まれてしまうのは、おそらく宇宙船のセットをミニチュアではなく等身大で作ったことと、演出の緻密さにあると思う。

 酸素がなければ人間は一刻も生きていけないのは、誰もが自明の事だが、その酸素を巡るアポロ宇宙船での乗組員の葛藤と、実際に酸素が欠乏しだして錯乱する時の演技・演出が見事で、観ているこちらの方が“酸欠”に陥りそうな迫真の描写だった。また、救助艇の打ち上げを阻止するハリケーン(これは物語中盤にさりげなく“伏線”を張っていた)とヒューストンとの“攻防”や、予定変更に伴うアポロ船内の酸素不足に乗組員がどう対処する、という“サスペンス”も、この“虚構”の物語に感情移入するに十分な演出だった。

 当時冷戦状態にあった米ソの関係を考えると、アポロ乗組員救出のため、敢えて軌道を変更してランデブーを目指したソ連・ボストーク衛星船員の“心意気”には心底感動した(過去の観賞記憶では、このソ連船員の行動は“徒労”に終わると思いこんでいたが、再見して、彼の活躍は救助に大いに貢献した事を知り、その点は嬉しかった(;^_^A)。物語は100%ハッピーエンドとはいえないものの、幾多の困難を経て、目的を遂行する、という“王道展開”は、最終的に安心して観られる作品世界を構築していたと思う。

 久しぶりに、見終わってフッとため息をついてしまう……それだけ堪能できた、古き良きハリウッド映画だったよ(;^_^A