『世界侵略:ロサンゼルス決戦』
近年『クローバーフィールド』『第9地区』を始め、「全く荒唐無稽な物語を、ドキュメンタリーのタッチで描くことによって、現実性を持たせる」という技巧が花盛りだが、本作もそれ。本来ならば『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』といった壮大なSFスペクタクルになるはずのストーリーを、あたかもアメリカ軍が中東で展開した戦争をCNNが取材しているかの如きカメラワークで描き、相手が宇宙人なだけの、全くの“戦争ドキュメント”に仕上げている。まあ、実際に宇宙人の侵略攻撃が始まったら、現実はこんなモンだろうけど、卓越過ぎるCG技術も相まって、何とも潤いのない映像が全編を包んでいた。
主人公のナンツ2曹が、悲壮感を漂わせつつも男気溢れる活躍ぶりを見せるため、つい海兵隊に感情移入してしまうのだけれど、この技法は太平洋戦争や湾岸戦争、イラク戦争を題材にした映画でも容易に用いることが出来るので、宇宙人をアラブ人や日本人に置き換えたら、正直ぞっとする。ま、日本人だって、邦画だって、同じことはいえるんだけどね。
ただ、CGのリアルさが、逆にドラマの虚構性を奪ったような気がするので、このような“フェイクドキュメント”は、“勧善懲悪”“予定調和”の王道映画を好む者としては、ちょっぴり複雑だったな