神宮寺真琴の“女性アクション”的立ち位置
この日記が区切りの“200号”になるので、今回は当団体のアクションヒロイン“天使諜報★神宮寺真琴”について書いてみたい。
上記のことは、美空ひばりが主演した一連の“異性装飾時代劇”に如実に表れており、劇中“姫”などの女性の設定で登場するひばりは、悪を諜報したり戦ったりするときには決まって、男装する。それは役柄ではなく、劇中“変装”するのである。よって悪を懲らすのは劇中の傍目から観ればやはり“男性”、つまり“ヒーロー”というわけだ。
そのことに変化が訪れたのは、“緋牡丹博徒”シリーズのお竜姐さん(藤純子)。彼女は見るからに女性のしなやかな肢体を持ち、どこから観ても色香を漂わせた女性にしか見えない。勿論男装などしない。女性の出で立ち、匕首をかざして殴り込みに向かう。しかし彼女自身、その第一話で父の墓前に「これからが女を捨てる」と宣言し、立ち居振る舞いは女性でも、恋愛には無縁という「精神的ジェンダーフリー」を標榜する。そのストイックさがかえって妖艶さを醸し出すことになるのだが……ここにも「女性が男性の立場に立つ」という状況は存在している。
さて、件の神宮寺真琴に目を向けると(ここから先は“天使諜報シリーズ”をご覧になった方だけを対象にした話になるかも知れないが……)、劇中、素の彼女は男勝りのぶっきらぼうな物言いしかしない。立ち振る舞いも男性的だ。その姿は「成りは女性でも性格は男性的」ともいえる。そんな彼女が指令を受け、容疑者や関係者へ内偵のため近づく際は、必ず“変装”するわけだが、過去の変装例を挙げると「女子高生」「ホステス」「看護婦」「女教師」「カープサポーター」「女刑事」「チャイナドレスの麗人」「花嫁」といった、一部を除いて殆ど“ステレオタイプの女性キャラ”ばかりだ。しかも、その変装時、彼女の言動は“素”と異なり、実に女性的且つ繊細だ。
つまり、神宮寺真琴は、男性的な女性が変装によって“女性を演じる”という、日本の女性アクション史上でも窮めて希有な存在だったことに気づいた。ある種、美空ひばりの逆パターン。しかしながら真琴役を演じる山田明奈嬢が、“素の真琴”の男性的演技とは裏腹に、その姿は極めて魅力的な女性なので、“女形”の時代に遡って論ずるのも適当ではない。
このパターン、世界的に見れば、『デンジャラスビューティー』のサンドラ・ブロックに通づるものがあるかも知れないが、この映画の場合、男性的な性格のキャラが劇中徐々に変化していく過程が描かれ、単なる“変装モノ”ではない点、ちょっと色合いが違うかも知れない。
何はともあれ、自己採点ではあるが、この希有なキャラクターを、大事にしていきたいと思う。
というわけで、200号記念の、パーソナルなネタでした(笑)