パウラ・アツコ・エブナー
2011年元旦は帰省もなく、朝から酒を飲む幸運にも恵まれたので、家族と共に正月番組をダラダラと観る一日だったが、そんな中で、ふとCSに切り替えたときに放映していたのが『ローレライ』。いつかはみたいと思っていたが、中々機会に恵まれなかった作品だ。
既に物語は前半部分を終えていて、ここで観初めても中途半端になるとは思ったものの、元来「途中観でも結構楽しむ」口なので、結局ラストまで観ることとなった。
東京へ投下される原爆が搭載されたB29を、テニアン島まで乗り込んで水際(まさに文字通り)で撃墜する、という設定は確かにカタルシス抜群だが、ここまで荒唐無稽ならば、いっそ広島か長崎に向かう奴をたたき落としてほしかった、というのが、広島に住む者としての願望だったがね。なんせ「テニアン」「B29」などの言葉にも敏感に反応してしまうんで。
後半だけに言及するが、主要キャストがよく死んでしまうところは痛々しかったな。特に佐藤隆太は全くの犬死に。ストーリーを盛り上げるだけの効果もない。柳葉敏郎も、あそこまで行けば別に死ななくても、と思ってしまった。また、B29を撃墜した後の展開が今ひとつ曖昧だったのもすっきりしなかった。小型潜行艇の2人の安否もよく分からないし(もしかしたら冒頭にあったのかも知れないけど……)。クライマックスの戦闘シーンが実に手に汗握る展開だっただけに、ちょっと尻切れトンボになった感がぬぐえない。
ところで、主人公ともいえる潜水艦・イ号507潜こと「ローレライ」のオペレーターを務める日系ドイツ人・パウラのキャラクターは戦場における紅一点として、コスチュームも含めなかなかかっこよかった。思いがけないところで“アクションヒロイン”を見つけてしまったとほくそ笑んだね(笑)
このパウラ役を演じる香椎由宇という女優。それまでは今ひとつ表情や生気のない“冷たい”イメージを漂わせる役者だと思っていたが、この映画では本来クールなキャラクターなのに、実に表情豊かで“熱い”演技を魅せてくれていた。どうも本作が映画デビュー作だったらしい。