神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「わかもの映画祭」感想(コンペティション)編②

 また間が空いてしまっちゃったけど(;^_^A、去る10日の「わかもの映画祭」コンペティション参加作品の感想です。今回は、「若者をテーマに制作映画部門」の5作品です。この部門には私も『THE 争奪戦っ!』なる作品を出品しているので、感想なんておこがましいし(;^_^A、決して偉そうなことなんて書けた義理でもありませんが、本当に率直に思ったことを書かせていただきます(;^_^A

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『逃げるSV(ショートバージョン)』(山中富雄監督)
 この作品は、完全版を「スクリーンライブHiroshima8th」で観賞したが、ヒロインアクション好きを自認する私にとっても十二分に楽しめる、本格的な(そして王道且つ典型的な)ヒロイン活劇に仕上がっていた。アクロバチックな殺陣から剣劇に至るまで、華麗の一言に尽きる! 特に後半のヒロイン“三つ巴”の死闘など、3人のビジュアルの素敵さや流麗な剣劇、そして斬新なカット割りも相まって、ついうっとり見とれてしまう出来だった。韓国ロケのシーンも、ハングルセリフに日本語字幕と異国情緒たっぷりの演出が成されていた。今回は30分近いオリジナルの尺を規定に則って約半分に縮めなければならないという“東宝チャンピオンまつり”もかくやのごとき大変な編集作業を強いられたと思うけど、オーバーラップで現在と過去を交錯させる絶妙な手法を用いて見事に乗り切っている辺り、流石ベテラン! と感じさせる職人技の作品だったと思った。

『Hold the Strings』(木井直智文監督)
 社会人となって夢と現実の狭間に苦悩する青年。職場からは「学生気分が抜けない」と言われ続け、鬱屈した日々を過ごしている主人公だが、彼にはかつてバイオリンを愛しバイオリン奏者の道を進もうとした過去があった。今回の「若者をテーマに制作部門」の作品の中で、一番今回のテーマに忠実な作品だった。主人公の苦悩が等身大で実に生き生きと描かれており、旧友との思い出や、かつての恋人との再会を通して彼が再び趣味であり特技であったバイオリンを再び手にしてオーディションに臨む姿が、ある種ダイナミックに描かれている。彼を叱咤激励する会社の面々も皆芸達者で、そんな彼らに“怒りの鉄槌”を喰らわす主人公の幻想がなんとも微笑ましい(;^_^A)。「希望と挫折の繰り返し」という普遍的な人生のテーマに乗っ取りながら、檜舞台に立って演奏を開始する主人公の姿で迎えるラストは、まさにカタルシスいっぱいの展開だった。

『ある日のかみかくし』(西村信之介監督)
 女子高生とオジサンという意味深な二人が、人里離れた神社で遭遇する摩訶不思議な出来事を描いたショートムービー。先に“意味深”と書いてしまったが、どうも親戚関係にある二人の、実にあっけらかんとした言動と親近感が実にいい。あたかも巫女のように小枝を持って熱心に祈り続ける女子高生と、やんわり突っ込みを入れながら優しく見守るオジサンとのやりとりも素敵。「神隠し」という一歩間違えばホラーの領域になってしまいそうなテーマが、実は女子高生の失恋による“現実逃避”に端を発したという点が実に現実的で、ホンワカしたホームドラマとして描かれているのも監督の絶妙のさじ加減が伺える。そんなとぼけた雰囲気の中、唐突に訪れる「かみかくし」のシーンと、そこから一気に巻き上がるサスペンスフルな展開には圧倒され、しかもその後のSFチックなオチにはあっけにとられてしまった。まさに急転直下の醍醐味を感じさせる作品だった。

『Epic』(本廣裕一監督)
 突然「ロックの神」の啓示によって、ロックバンド結成に奔走し始める主人公の奮闘を軸に描かれた、典型的なバンドムービー。主人公の必死さと、彼の元に集結する個性豊かなメンバーとの交流や葛藤が作品の中心だが、彼ら登場人物のキャラクターが実に個性的且つ魅力的で、あたかも『七人の侍』のそれを彷彿させる。物言わずともその唐突性と動作で十分に“面白真面目”に笑わせてくれる「ロックの神」の存在もいい。徐々に集結していくメンバー、そんな彼らとの葛藤や何かしらのトラブル(ここではボーカルの主人公が音痴と作詞で悩みバンド解散の危機)の発生を経て、それを乗り越えてのライブ演奏、と、まさに王道のストーリーがオーソドックスに展開していく。メンバーを通して主人公が成長していく姿も克明に描かれていて、思わず感情移入してしまう。沢山の要素が折り込まれていて、15分という尺の中でここまで出来るんだ、と感心させられる作品でもあった。

『でぃあーわんこ~Dear our dog~』(はまの省蔵監督)
 新築したばかりの家で暮らす母と娘が、母の知人の紹介で、里親が見つかるまで犬の面倒を見るボランティアに関わることで起こる、“優しき一騒動”を描いた作品。「動物愛護」というはまの監督お家芸のストーリーで、動物に対する愛情を多方面に向かって優しく、そして厳しく描いている。前半の家族とのやりとりはしっかりとしたドラマとして描かれているものの、途中ボランティアで犬を預かり始めてからは、ドキュメント的な視点も加味され、預かった犬に徐々に感情移入していく登場人物の思いが、痛々しいまでに観る者に伝わってくる。それは悲しくも美しい別れを演出するスパイスのように……。「動物愛護」の啓蒙を、直接的な表現ではなく、ハートフルな娯楽ドラマの形態を用いて伝えていくことの効果や重要性を改めて感じさせる作品だし、その中に、「生き物を飼う」ことの素晴らしさと責任を折り込んでいる手法には感銘を受けた。


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