神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『シュガー・ラッシュ:オンライン』②~カタルシスの行方~


 ゲーム「シュガー・ラッシュ」の“住人”であったヴァネロペは、マンネリ化したゲーム世界の中で、常に刺激を求めていた。そんなところが、日々安定した“いつも通り”の生活を望む親友のラルフと時折“衝突”したりもしてしまうわけだが、そんな彼女は、オンラインゲーム「スローターレース」の刺激的な展開にすっかりハマってしまい、ネット世界へ残ることを希望する。それに焦ったラルフは、あろうことか、悪徳ポップアップ広告で知り合ったJP・スパムリー のつてで“ウィルス”を手に入れ、ヴァネロペを惑わす「スローターレース」の破壊を目論む。しかしその“ウィルス”はラルフの精神的な弱さ(脆弱性)をついて、それを糧に想定外の蔓延をはじめ、ついには「スローターレース」のみならず、インターネット世界全ての破壊を開始してしまう。全てのウィルスはラルフの姿を模し圧倒的な数によって、バーチャルリアリティの世界を悉く打ち壊していく。しかのそのターゲットはヴァネロペだ。そこで自分の弱さを恥じたラルフと、この事態のきっかけを生んだことに気を病んだヴァネロペとの捨て身の行動によって、ウィルスは何とか駆逐され、ネット社会には平和が戻った……てのがクライマックスの展開だ。

 でも待てよ、本来この物語はいかにしてネット世界で「シュガー・ラッシュ」の破損したハンドルを見つけ出し、かつ無事にネット世界から「アーケードゲーム」の待つゲームセンターに戻るかっていう冒険の物語のはずだ。そんな肝心の「ハンドル探し」の方は、中盤ですぐにハンドルは手に入り、通販宜しくゲームセンターには郵送で届けられることになり、あっけなく成就。そんな中で上記のようなスペクタクルが用意されていたんだけど、どうももぞかしい。ここで友情なぞ教訓なぞを語られても、どうもカタルシスに欠ける。これも日本映画の悪しき習慣を真似したわけではないだろうけど、後を顧みずに行け行けドンドンだったハリウッドの映画としては何ともスッキリしない。いっそのこと、物語の焦点を「ハンドル」を巡る部分に特化して、もっと“冒険してほしかった”ってのが偽らざる心境だ……(あともう少し、③へ続く)