シネコンの「罪」と「功」
広島の地に「ワーナーマイカル広島」(現イオンシネマ広島)が誕生して以来、広島市内の単館映画館は一部の成人館を除き軒並み姿を消してしまった。「広島東映」「東映パラス」「朝日会館」「松竹東洋座」「広島名画座」「OS東劇」「広島リッツ」「広島スカラ座」「広島にっかつ」………そしてまさかの「広島東宝」までなくなってしまうとは思いもよらなかった………業界人やいっぱしの“映画通”を名乗る者が、気取って映画館のことを「ハコ」なんて呼んだりするが、現在はやりのシネコンは、比喩でも何でもなくまんま「ハコ」化している。悪い意味でシステマチックされたそれは、映画館独特の風情・ワクワク感をすっかり奪ってしまったが、確かに映画を観る利便性を大いに高めてくれた。特に街中にあるが故(そして広島市の駐車料が馬鹿高い!)、公共交通機関を使っての来場、折角街に出たんだからと、やや奮発しての昼食、と、かつて映画観賞は一大イベントだった。それが、無料駐車場に気軽に車を停めて、買い物ついでにフラッと映画を観る、そんなシネコンの“カジュアル”感も、映画観賞のハードルをうんと下げてくれたという点において、非常に意義深いものだといえる。また映画の「ハシゴ」もシネコンならば簡単だ。