神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

小ネタに律儀な演出

 先日、映画『人間の証明』(佐藤純彌監督)と松田優作のドラマ『探偵物語」のラストの類似点について書いたけど、重ねていうならば、共にドラマの中でさして重要に描かれていなかった“泡沫:”キャラにきちんと“落とし前”を付けさせる、妙な律儀さが描かれている。

 これと同様の描写がギャグにまで昇華されたのが、赤井英和初主演の映画『どついたるん』(阪本順治監督)の中に出てくる。劇中、赤井演じる安達のジムに募集で集まった練習生たちが、自己中心的で身勝手な安達のやり方に業を煮やし、遂にうち一人が安達に噛みついた上でジムから追放される。その際、キレた安達が他の練習生に向かって「お前等もいやなら出て行けや」と啖呵を切って部屋の中に入っていった途端に、練習生たちは怒りの表情を浮かべつつ、皆ぞろぞろとジムを後にしていく。しかし一人だけベンチプレスをやっていた者だけが、それを補助していた練習生たちが出て行ったため、その場から一人逃げられない、なんてシーンがある。まあよくある小ネタ(ギャグ)だ。

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 しかしながら、次に安達のジムのシーンになった時、その逃げられなかった練習生が一人でジムの中で練習している描写が出てくる。そこが何とも笑えてしまうのである。その前の“使い捨て”の様な一発ネタのギャグを、律儀にもストーリーの中で踏襲している。しかもドラマの進行上、伏線でも何でもない小ネタのシーンをだ。だから“お約束”の裏をかくような可笑しさに満ちている。まるで「確信犯」のように。

 最近はすっかり巨匠というか社会派監督の仲間入りをしてしまったような阪本順治監督だが、そのヘヴィーな演出ぶりは今も昔も変わってはいないけど、初期の頃は、こんな小粋な小ネタをふんだんに組み込んだ映画を撮っていたんだ、ってふと思い出した次第。

 こういう“お遊び”精神は、私もいつか“踏襲”してみたいと思っている(;^_^A