『レイズ・ザ・タイタニック』~“失われた航海”からの帰結~
豪華客船タイタニック号の悲劇はあまりにも有名で、デビット・ジャンセン主演の『失われた航海』や、近年のメガヒット『タイタニック』(ジェームズ・キャメロン監督)など、「タイタニック号」を取り扱った映画・ドラマは枚挙に暇がないが、どのように描こうとも、結末は分かりきっているので(それも悲劇的な結末)、どうしても食指が動かない(だからまだキャメロンの『タイタニック』さえきちんと観たことがない)。しかしながら、同じ「タイタニック号」テーマでも、大胆にもタイタニック号を深海からサルベージするという荒唐無稽な設定の『レイズ・ザ・タイタニック』だけは大好きで、劇場公開にも行ったし、未だにTV放映されると必ず観る。
本作は、単にタイタニック号を引き上げる海洋ロマンに収まることなく、そこに米ソ冷戦時代ならではの軍事サスペンス的要素を交え、しかもラストに向けてどんでん返しが展開するという、上質のエンターティメント作品に仕上がっている。娯楽性は『タイタニック』よりこっちの方が数段上だ。しかも娯楽性の中にしっかり反核のテーゼを交えて描く辺り、まるで鈴木則文御大の映画のようである。
全米全土をレーザー網で覆い、ICBMの驚異からアメリカを守る「シシリー計画」のエネルギー源としてなくてはならない超核物質“ビザニウム”が、タイタニック号と共に大西洋に沈んでいたことが判明してから始まる、空前のタイタニック引き上げ作戦。それを嗅ぎつけて、“ビザニウム爆弾”の開発を目論むソビエト連邦との神経戦や、未知の広大な深海からタイタニックを探してサルベージする、引き上げ作戦の全貌など、息もつかせない展開だ。深海ならではの息も詰まるよう描写は、閉所恐怖症気味の我が身にとっては観ていて結構ヘビーだったりするが、それでもタイタニック号を発見した後の怒濤のような引き上げ作戦、浮上後のソ連軍大尉との駆け引きと、結末に向けて一気に突き進んでいくストーリーは秀逸だ。タイタニック号がスロー映像で洋上に浮かび上がってくる描写など、“神々しい”までに荘厳である。
ただ、本作で一番感動的なのは、大西洋上から曳航されてニューヨークに入港するシーンだ。CGに慣れた今の目で見ると粗ばかり目立つ当時の特撮技術で描かれてはいるが、もしあの時タイタニック号が氷山激突の悲劇に遭わなかったら、当時こうしてニューヨークにたどり着いていたんだな、って思うと、観ていて胸が一杯になる。
『スターウォーズ』しかり、『スタートレック』しかり、『スペースバンパイア』しかり、これら80年代の特撮は、“CG前夜”の手作り感に満ちていて、往年のミニチュアワークの延長線上にある、まさに「トクサツ」の時代だった。それ故、逆説ながら“ミニチ』ュアワーク故の重量感”に満ちている。観ていて何故かホッとする。
現行のCG特撮がやがて息詰まった時、モーションアニメとミニチュアワークが再び脚光を浴びる時が必ず来る、と思う。