神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『地球防衛軍』 "大人"の河内桃子

 過日、東宝SF特撮映画『地球防衛軍』に触れ、あのイマジネーションを刺激する精密なミニチュアワークや合成の素晴らしさについて書いたけれど、それとは別に、本作は往年の東宝を代表する女優・河内桃子が、その特撮映画のフィルモグラフィーの中で一番「女性」として輝いていた映画でもあることについて触れてみたい。

 1954年の『ゴジラ』で晴れて“東宝SF特撮ヒロイン第一号”の称号に輝いた河内桃子だが、この『ゴジラ』と『獣人雪男』のモノクロ特撮2部作では、どうしてもリスのようなあどけない瞳が印象的な、失礼ながら“育ちのいいお嬢ちゃん”然としてキャラクターが印象的だった。だから劇中の宝田明とのラブロマンスもある種「飯事」のようであり、また平田昭彦演じる芹沢の仄かな片思いを知るよしもない「カマトト」ぶりも、彼女なるが故に妙にリアルだったりした。

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 それが初の総天然色特撮映画主演となった『地球防衛軍』では、今度は平田昭彦演じる白石に一途な愛を貫く女性・岩本広子役を実に愛くるしく演じていた。忍ぶ恋に伏し目がちな仕草や、彼を見つめる愁いを含んだ視線が何とも大人びていて実に魅力的だ。そしてノースリープの衣装からはみ出す二の腕のなまめかしさや、ミステリアンの尖兵に拉致されて思わず気を失ってその腕に無防備に抱かれる姿など、『ゴジラ』の時のリスの瞳そのままに、肉体だけ成長したかのようなアンバランスさの妙を十二分に感じさせる。

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 芹沢と恵美子との悲恋と同様、本作における同じキャストで演じられた白石と広子との愛も成就されることなく、これまた同じ平田昭彦が演じた芹沢同様、白石の(おそらく)死によってその幕を閉じるわけだが、そんな彼が死地に赴く際、力の限り彼の名を呼んで後を追おうとする広子の健気さもまた、本作での彼女の色っぽさを強調していたように思う。

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 もっとも「~第一号」ながら、当時河内桃子が出演した東宝SF特撮映画は上記の3本だけで、その中で本作が一番新しいということを考えると、単に彼女の成長過程が故の本作の大人の女っぷりだっただけなのかもしれない。だから本作以降の一般映画に登場する彼女を観たら、より成長した河内桃子を拝見できるののだろう。それでも、『美女と液体人間』でその魅力を爆発させた白川由美が、『地球防衛軍』の頃はまだ"青臭さ"を漂わせていたことを考えると、やはりこの『地球防衛軍』こそ、河内桃子が一番輝いていた特撮映画と呼んでいいのではないか、と思ったね。

 それにしても、晩年『ゴジラvsデストロイア』に、これまた晩年の山根恵美子役で出演し(これによって、恵美子と尾形とのロマンスも成就せず、その原因に芹沢の存在が影を落としているかのようなサイドストーリーが示唆されている)、一旦はゴジラの幕引きに引導を渡して世を去った河内桃子嬢は、ある意味ゴジラに、東宝特撮映画に殉じた女優だったのかも知れない。