神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『アトミックブロンド』

 シャーリーズ・セロンといえば、最近『マッドマックス 怒りのデスロード』における隻腕の“女ヒーロー”フェリオサ大隊長役が余りにも衝撃的だったが、同じ“ヒロインアクションムービー”としては、より女性的で可憐だった『イーオンフラッグス』の方が個人的にはお気に入りだったりする(;^_^A そんなわけで、彼女が自ら主演はおろか制作まで関わった『アトミックブロンド』は、そのポスター等のビジュアルから、前述した『イーオンフラッグス』的なヒロインアクションムービー何じゃないかって、公開時から期待していた作品だ(「『アトミックブロンド』に期待!」https://blogs.yahoo.co.jp/jinguji_ipf_s1986/29055963.html)。

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 そんなこともあって、今回ようやくレンタルDVDながら観賞したんだけれど、ルックスはビジュアルどおりだったが思った以上に“フェリオサ大隊長”的な武骨な物語・アクションに充ち満ちていた。

 物語は「ベルリンの壁」崩壊に伴う東西冷戦終結前夜。そんな激動の時代の残滓島も言うべき、西側スパイとソビエトKGBとのマイクロフィルムを巡る攻防を軸にした物語が展開していく。シャーリーズ・セロンが演じるのはイギリスの秘密諜報員ロレーン・ブロートンで、東西ベルリンを巧妙に行き来しながら、その攻防に身を委ねていく。このロレーンというキャラは、その鉄の意志や高い身体能力という点で、まさに「男まさり」なんだけれど、そのルックスやファッション、そして戦闘時の意外な苦戦ぶりに、思いがけず“女性っぽさ”を垣間見せたりする。スパイだけあって、服装どころか髪型・髪色まで変えるのはお手の物なんだけれど、決して活動的なボーイッシュな出で立ちにはならない。常にヒールの高い靴かロングブーツを着用し、パンツ(ズボン?)姿も殆どない。まるで自分の身体さえ別の意味で「武器」であると言わんばかりに、挑発的なコスチュームに身を委ね、男たちを、そして時には他国の女スパイまで色香に欠けようとする。

 ただ、そんな出で立ちのまま、時には“肉弾戦”とでも言うべき激しく痛みの伝わるアクションも魅せてくれる。その時、意外なのは彼女が圧倒的な強さを発揮する、と言うわけではない点。確かに勇ましく闘うんだけれど、「いくら鍛えても所詮は女」と思わせる非力な面も露呈したりする。そんな時彼女を助けすのが、彼女が身につけているハイヒールを筆頭に、その場にあるありとあらゆる道具。とにかく手当たり次第振り回すことで、辛うじて男たちと互角に戦いを進めていく。時には相手から奪った鍵束を、その相手の頬に突き刺すことも……その分、相手からは手荒に殴られ蹴られ突き飛ばされ叩きつけられ、と、まさにぼろ切れのように情け容赦なく反撃を受ける。そこには性的なものは一切なく、ただただ敵を殲滅するという使命感のみで闘っている感じだ。

 また、完全無欠のように見える彼女が、結構相手に出し抜かれて度々任務遂行に失敗するという意外な面があって、この手のヒロインアクションムービーではヒロインは完全無欠でなければならない、と思っている私にとってはちょっと物足りない展開だった。それ故ラスト30分辺りのたたみかける展開には爽快感を持って圧倒されたものだった。もっとも、純粋なアクションという点では、前半の、今からパーティでも行くようなロングコート、グローブ、ハイヒールといった出で立ちで、東ベルリンの警察官(KGB?)たちをバッタバッタとなぎ倒して行くシーンと、中盤のクライマックスで、『男たちの挽歌Ⅱ』におけるチョーユンファとディーンセキによる“敵中突破”を彷彿させる、ビルに待ち伏せた敵を、銃撃で、肉弾戦で辛うじて殲滅するシーンで、もう「お腹いっぱい」って感じだったけど……(;^_^A

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 それにしても、この作品は時系列にストーリーが展開するわけではなく、どちらかといえば、現在からスタートして、上司の尋問に対するロレーンの告白という形で物語が進んでいく。さらに、そこに何度も現在の彼女らはインサートされて、それでいてラストは現在より数日後まで進行するという複雑なものだった。観ている間、彼女らの任務や、敵は誰なのかなど、最後まで分からない点が多かったのは、この手の映画には“ノンストレス”を求める者としては、ちょっぴり残念だった。

 そんな訳で、本作はシャーリーズ・セロン嬢の、この映画のために鍛え上げられたボディーとアクション、そして煌びやかでセクシーな出で立ちを拝む映画といえるんじゃないかな。そうそう、劇中ロレーンの色香(?)に墜ちるフランスの新米スパイ役として、『キングスメン』で両足義足のスーパーヒロイン“ガゼル”役を務めたソフィア・ブテラが出演していたのは、観ていて嬉しかったな(;^_^A