神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『64-ロクヨン-』で垣間見た“悪辣な”表情

 1964年(ロクヨン)生まれの誕生日に、“昭和64年”をテーマにした『64』(ロクヨン)が放映されるとは、何たる奇遇!(;^_^A

 ところで、この映画で誘拐犯に翻弄されるスポーツ用品店の親父・目崎役で緒方直人が出演してるんだけど、身代金を載せた車で犯人に誘導される際の彼の狼狽ぶりが半端でなく、狂気すら感じられる危機迫る演技だった。それ故、犯人逮捕のために真実を知らされず、犯人はおろか警察にまで翻弄される目崎があまりにも哀れで、唯一この状況が許せなくなった佐藤浩市演じる三上警視の怒りに同調するほどだった。しかし、当の目崎には僅か7日で幕を閉じた昭和64年に起こった同様の誘拐事件に関わる“謎”を抱えていた……という展開で、この映画はクライマックスを迎えていく。

 この昭和64年と、それから(時効に該当する)15年後の平成に起こった2つの少女誘拐事件をストーリーのメインにしつつ、月跨ぎで「前編」「後編」を矢継ぎ早に公開する、という、TVのなかった時代ならばまだしも、何とも意欲的というか実験的精神に満ちた、最近では逆に斬新な手法で、映画版『64』は展開するんだけれど、本作で敢えてこの目崎役にスポットを当てたのかといえば、何といっても緒方直人の演技力(とりわけ表情)につきる。

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 娘を誘拐された哀れな親父としてただただ同情の対象としか見えない目崎が、時折見せる“悪党”の表情には、『世にも怪奇な物語』の「悪魔の首飾り」に登場した少女の悪魔の恐ろしい表情もかくや、というくらい不気味で底冷えがする様な冷徹さだった。しかもそれを、先の実写版『宇宙戦艦ヤマト』でも穏和な島大介役を務めるなど、善良な役が板についた緒方直人が演じているという点が意味深だ。否、そんな緒方直人がこの役を演じているからこそ、この役の悪辣さがより際だってくるのだともいえる。あたかも、必殺ドラマの逸品『暗闇仕留人』で、山本學のようなキャラに敢えて極悪人役を演じさせた意図と似ているように……

 キャラが確立している役者に敢えてその対極にある役を演じさせる……それもまた映画(演出)の妙だったりするものだ(;^_^A

 ちなみに、ドラマ版でこの役を演じたのが、「尾道三部作」皆勤の尾美としのりで、緒方直人のカミさんが『セーラー服反逆同盟』の仙道敦子……って、いつの間にか我がフィールドに迫ってきたじゃないかヾ(--;)

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