異色ドラマの“小悪魔”ヒロイン
宣弘社といえば『月光仮面』を筆頭に枚挙に暇がなく、黎明期から隆盛期かけてのテレビ界で、後発のピープロや円谷プロ、また東映のテレビ特撮と共に、子供向け番組の一時代を築いた会社である。そんな宣弘の特撮ヒーローの中でも際だって異色なのが『シルバー仮面』『アイアンキング』の2大作品だが、もともと円谷を去った実相寺昭雄とそれに追随した当時の元円谷スタッフが始めた企画なんで、円谷プロへの対抗心というか、いかにも変化球な作風で、とても衝撃的だった。
夏純子という女優、清廉さと小悪魔的な雰囲気を併せ持つ希有な女優だと思う。何といってもデビュー作があの若松孝二御大の衝撃作『犯された白衣』なんだものΣ(゚д゚;) 劇中彼女は、拳銃魔の殺人鬼・唐十郎の毒牙から唯一逃れ、彼女の機転によって拳銃魔はあえなく御用となる、とモラル的には素晴らしきヒロインなんだけど、拳銃魔の立場で考えると、仲間が殺される中、あたかも彼の精神の母親になったかのような態度で言葉巧みに彼を懐柔し、彼が油断しきったところを見計らって彼を裏切り警察に売り渡す、というまるで“悪女”にすり替わってしまう。そんな危うさは常に彼女のイメージにあり、他のどんな番組・映画でも「いつか裏切るんじゃないか」って緊張感を醸し出していた。

森川千恵子は、見るからにお嬢様然とした風貌で、むしろ財にものを言わせて貧しい主人公をいじめ抜くようなクールな表情も湛えていた。初代「仮面ライダー」に於ける緑川博士に娘・ルリ子役でも、当初は自分の子父を殺害したのは本郷猛だと思いこみ、執拗に彼を追い回し且つ罵倒し、彼女の存在が本郷を窮地に追いやるなんて設定もあったっけ。それが、彼に対する誤解が解けた途端、ルリ子はしおらしく可愛らしい娘へと変化し、そのギャップは、彼女のその容貌ゆえ、より魅力的に見えたっけ(;^_^A 『アイアンキング』のゆき子は、その正体が(不知火十番目の影)という、文字通りの敵“悪女”として登場していたが、何故か途中で正体を明かした挙げ句番組からフェードアウトしてしまった。後にこれは撮影現場でのアクシデントと判明。でも最後まで観たかったなぁ……

この二人のヒロイン、どこか影があって、悪女の匂いがして……まあこっちの勝手な思いこみなんだけど、これらの特殊な特撮ドラマの世界にマッチしていたなぁ(まあ夏純子は劇中悪女でも何でもなかったけど……(;^_^A)