神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

アンジェラと“悦っちゃん”

 昨晩、BSで『燃えよドラゴン』を放映していた。この映画だけは、今まで数限りなく観てきたけど、何度観ても「また観たい!」衝動に駈られる映画だ。だから何かの弾みでテレビ放映されていると、結局最後まで観きってしまう。しかしながら今日ばかりは、肩身の狭い親父にはチャンネル権がなく、泣く泣くつかの間の観賞しか叶わなかったよ(ノ_-。)

 それで、件の僅かな観賞場面が、劇中ブルース・リーの妹役を務めるアンジェラ・マオが、オハラをはじめハンの配下たちに追い詰められれ、遂に貞操の危機を感じ、自らの手でガラスの破片を腹に突き刺し果てる、かの有名なシーンだった。このカットが回想として挿入されるオハラとリーとの闘いは未だに語りぐさなんだけど、今回はこのアンジェラ・マオを観て、いろいろと思いを馳せてしまった。

 確か、70年代後半、香港のクンフーブームの影響下で東映は数多の空手アクション映画を世に送り出してきたが、その系譜の一つとして、ヒロインのアクション映画の企画(というか岡田社長の厳命)が立ち上がった際、最初に白羽の矢が立ったのが、何を隠そう、このアンジェラ・マオだったらしい。しかし、日本と香港、そしてアンジェラ本人との折り合いがつかず、この企画は会えなく頓挫。そこへ、アクションヒーロー千葉真一御大の強い勧めもあって、彼女に変わる“国産”アクションヒロインとして抜擢されたのが、後の日本アクションヒロインの金字塔・志穂美悦子その人だったのである。

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 千葉真一に憧れて、スタントウーマンを目指して岡山から上京し、JACの門を叩いた志穂美の悦っちゃんは、端役ながら早くから銀幕デビューを果たしたものの、やはり初主演作『女必殺拳』での華々しい活躍により、お竜姐さんこと藤純子とはまた違ったアクションヒロイン像を確立し、一大ヒロインアクションブームを引き起こした。しかも当時ズベ公全盛期であるピンキーバイオレンスの潮流に呑まれることなく、頑なに清純路線を(『13階段のマキ』以外)貫き通し、女性からも指示されるアイドルの地位も確立してしまった。

 そうなると、つい“IF”を考えてしまうんだけど、もし当時アンジェラ・マオが出演を快諾し、彼女主演によって『女必殺拳』的映画が撮られていたとしたら、一体どうなっていただろうか。もしかしたら悦っちゃんはアンジェラのライバルか妹辺りのポジションは確保したと思うが、その本格的なデビューはもっと後になり、ここまでの隆盛を極めることもなかったのではないか。

 そう考えると、ちょっとした偶然が、一人の女優を……否、邦画界の地図を大きく塗り替えた事実には、興味が尽きない。