神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『ウルフガイ 燃えろ狼男』

 昨晩チャンネルNECOにて『ウルフガイ 燃えろ狼男』を観賞。この日は東宝の『狼の紋章』と本作の「“宝”“映”ウルフガイ競演」で、一時、本来のタイトルを逸脱した感のあった「特撮大国日本」企画も、ようやく軌道修正してきたようだ(^^)(「『特撮』はト・ク・サ・ツ!」https://blogs.yahoo.co.jp/jinguji_ipf_s1986/28700332.html

 さて、この「ウルフガイ競演」に関しては、『狼の紋章』はうんと以前にレンタルビデオで一度拝見したことがあったが、今回観た『ウルフガイ 燃えろ狼男』の方は、その存在を往年の特撮専門書(バイブル?)である「大特撮」で知る程度だった。それ故今回の観賞が初見だったんだけれど、最近東映プログラムピクチャーに傾倒している、そんな感覚の時に観られたのでタイミングも良く、結構楽しめたよ(;^_^A

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 本作の予備知識として、確か学生時代のSF研の先輩から聞いたと思うが、「主人公は狼男に変身しない」という凡そ“狼男映画”にはあり得ないシチュエーションがあったんだけれど、『狼の紋章』で志垣太郎が演じた変身後の狼男のマスクが、あまりにも漫画チックな“手の込んだチープさ”だったことを考えると、主人公が我らが千葉真一御大(それもバリバリの頃!)なんで、それもありかな、って思いながら観た。

 さすが演出が『多羅尾伴内 鬼面村の惨劇』の山口和彦監督なんで、オープニングタイトルのバックが、人間たちに狩り殺され全滅する人狼族の集落のシーンという、いかにもおどろおどろしい映像で、いやが上にも雰囲気を盛り上げる。そこで唯一生き残った少年の行く末が、千葉チャンなわけで、以後、トップ屋を世を忍ぶ仮の姿にした千葉チャン演じる主人公・犬神明が、芸能プロと政界との暗躍によって全てを奪われ、梅毒感染&重度のシャブ中毒という過酷な宿命を背負わされた元人気歌手・緒方ミキの怨念が生み出した超能力の引き起こす事件に関わって、物語は展開していく。このミキを演じているのが、今やバラエティー界で強面のオバサンを演じる奈美悦子なんだけど、さすが広島東洋カープ初優勝時の1975年の作品名だけあって、まだまだ可憐な美貌を誇っていた。しかも政界の大物の息子とのラブラブな状態から、ここまで突き堕とされた急転直下の不幸を一身に背負った影のある演技がまた素晴らしい。

 そんな彼女の情念が「虎」の生き霊となって、まさに敵を念力の爪で文字通り切り裂き殺す。しかし、そんな彼女の能力に目をつけた内閣の特殊機関が、首相の政敵を暗殺する道具として彼女を誘拐し、同時に同じ目的でかねてから目をつけていた犬神も一緒に拉致する。そこから、ナミへの催眠・洗脳と、協力を拒む犬神への凄惨な拷問が科せられていく。

 ここで、洗脳されたミキの実験台にされるのが、彼女を陥れた芸能プロダクションの社長・真鍋(つまり真鍋プロ→ナベプロということで……(;^_^A)。この真鍋社長を演じるのがご存知・名和宏で、いつもは「東映異常性愛路線」で女性の人生を精神的に無慈悲にズタズタにしてしまう好色漢である彼が、ここでは逆に女(ミキ)から文字通り物理的にズタズタに引き裂かれて、血まみれ骸と化してしまう。考えれば本作、他の「東映プログラムピクチャー」と同様……というかいつも以上に血糊の量が多いような気がした。犬神の方も、手術台に括り付けられた拷問の過程で、血まみれになってはらわたを引きずり出されたりする(協力を強要する拷問でこんなんアリ?)が、ここが狼男の真骨頂! 満月の夜にその引きずり出された腸がみるみる体内に戻って行くではないか? ということで、本作では、狼男の能力は、狼への化身ではなく、あり得ない戦闘能力・自己再生能力として描かれているのである。ほどなく、特殊機関のメンバーでありながら彼に寝返ったケイティ青木(カニー小林)の手引きによって機関のアジトから脱出した犬神は、そこで拷問の過程で彼の血を輸血された「即席狼男」(by wiki)と対決するが、相手が人間と狼の血によって敗血症を起こし、途中不戦敗。自分を救ったケイティを脱出の際に死なせてしまった犬神は、失意のまま、生まれ故郷の集落に身を寄せることになる。

 しかしそこで彼は、かつて自分の集落を皆殺しにした人間の末裔たちに捉えられ、何故か彼らと繋がっている特殊機関に引き渡されそうになる。そこへ登場したのが、かつて犬神の母と親友だった親を持つ娘・タカ(渡辺やよい)。彼女に助けられた犬神は、彼女の住まいに身を寄せ、そこでタカと結ばれることになる。それにしても本作、SFチックな物語の割に、濡れ場シーンがやたら遠い。前半のケイティ青木、緒方ミキに、クライマックス近くのタカとの絡みまで……やたらバストを見せられて、まるでポルノ映画のようだ。時に70年代中盤、オイルショックも体験して、東映も迷走していた時代なんだろうな……

 でもそんな生活も長くは続かず、すぐに特殊機関の幹部・加藤(待田京介)・石黒(刈谷俊介)が、ミキを連れて集落に登場。そこでミキを犬神暗殺のためにけしかけるが、結局ミキはタカと同士討ちとなって共に果て、恋人二人を失った犬神の怒りによって、加藤と石黒はあっという間に惨殺されて、再び失意の犬神はタカの亡骸を抱きかかえて山へ消えていき………って、「え、ここで“終”なの? 特務機関トップの佐貫室長(室田日出男)は? 諸悪の根源・福中義行議員(近藤宏)はどうすんのよ?」って感じの尻切れトンボなラストだった。まあ、クライマックスの戦闘が終わったらいきなり「終劇」なクンフー映画みたいだ、っていえはそうなんだけれど……

 千葉チャンのファイトはキレキレで実に格好良かったんだけど、出来れば“生身の狼男”の設定に恥じない、もっと破天荒なアクションをしてくれたら、もっと良かったかな(;^_^A