神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

「未来」に向かって脱出する……

 ネットの記事を観て、我が目を疑ってしまった……遂に、東宝特撮“最後の牙城”が黄泉の国へ旅立ってしまったのかと………。

 故土屋嘉男氏は、東宝怪獣特撮の黎明である『ゴジラ』での活躍はなかったもの、翌55年の『ゴジラの逆襲』には早くも出演、以後黒澤映画と平行して、主に“人類じゃない”風の役柄で大いに活躍した稀代の名優だった。『地球防衛軍』(1957)の“ミステリアン統領”『ガス人間第一号』(1962)の“ガス人間・水野”『怪獣大戦争』(1965)の“X星人統制官”などの宇宙人・怪人は言うに及ばず、例え人間役であっても、宇宙人に操られ“ロボット”化する『宇宙大戦争』(1959)の宇宙飛行士・岩村”・『怪獣総進撃』(1968)の“大谷博士”・『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』の“宮”や、怪物にメタモルフォーゼする『マタンゴ』(1963)の“実業家・笠井”などなど、結局人間の存在を超えた役が特に印象に残っている。

 中でも、『怪獣大戦争』における“統制官”役の、金属のような冷徹さ、独特のフィンガーアクション、即興で考えたドイツ語風“X星人語”、歯の浮いたような機械的な発言等々、典型的な宇宙人を見事に演じきっていたと思っている。時には一般映画でヒューマンな役柄を演じることもあったが、私にとっては、登場する度に「決して心を許してはいけない人なんだ」と幼心にも思ったものだった。勿論、それだけ土屋嘉男氏の演技が迫真だったからに相違ない。

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 何はともあれ、「黒澤映画」と「東宝特撮」という、我々の映画好き世代に取っては、「いつもスクリーンの中にいる人」であり、いかにも映画俳優だった。もっともテレビドラマに出ても存在感はピカイチだったけど……

 そう言えば、前出の『怪獣大戦争』のクライマックスにおいて、地球人に敗北し、自らの死期を悟った統制官が、「我々は脱出する……“未来”に向かって脱出する……まだ見ぬ“未来”に向かってな……」と今際の際にそう呟いて、やおら自爆装置のスイッチを押す、というシーンがあったけど、まさに今(といっても実際の死は半年前)氏は「未来に向かって脱出」したのだろう………

 あまりにも絶望的な現代日本で今も生きている身として切実に思う。土屋氏が旅立った「まだ見ぬ未来」とは、果たしてどんな世界なんだろう………合掌。



黒沢映画の脇役、特撮にも…土屋嘉男氏が死去
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170906-00050059-yom-ent

 「赤ひげ」など黒沢明監督の作品や特撮映画で、存在感のある脇役として活躍した俳優の土屋嘉男(つちや・よしお)さんが2月8日に肺がんで死去していたことが分かった。

 89歳だった。葬儀は近親者で済ませた。近く、お別れの会を開く。喪主は妻、みどりさん。

 山梨県出身。俳優座養成所時代に映画デビュー。1954年の黒沢監督の「七人の侍」に出演したことがきっかけで東宝と契約し、同監督の作品の常連となった。また、「ガス人間第1号」「マタンゴ」、ゴジラシリーズの「怪獣大戦争」など特撮映画への出演も多く、時代劇を中心にテレビでも活躍した。著書に「思い出株式会社」など。