神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『実録外伝 大阪電撃作戦』

 不幸中の幸いといおうか……松方弘樹氏の逝去がきっかけとなってか、最近彼が主演を務めた東映70年代の実録モノが、次々とDVDリリース・レンタルされるようになった。その中には、かのタイトルに「広島」を冠した2作品も含まれているんだけれど……今回借りて観賞したのは『実録外伝 大阪電撃作戦』である。

 この作品は、昭和35年に大阪で実際に起こった抗争「明友会事件」をモチーフにした作品だが、同じ事件を扱った、小林旭・梅宮辰夫主演の『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』が山口組(を模した川田組)サイドから描かれているのに対し、こちらの『大阪電撃作戦』の方は、タイトルとは裏腹に“「電撃作戦」される側”の明友会(を模した双竜会)の側の物語になっている(役は違うものの、マイトガイと辰兄ィは川田組サイドで「電撃作戦」を画策したり参加したりしている)。

 「明友会事件」自体は、明友会のチンピラがスナックで田岡組長にちょっかいを出して激怒させた事に端を発した、山口組系列による一大殲滅作戦、俗に言う“人間狩り”の事件だが、本作では、「川田組」「双竜会」と名を変え、神戸川田組の大阪進出を阻止するために暴れるチンピラたちの所業から物語はスタートする。

 ここで双竜会の松方弘樹と、大阪の暴力団・南原組の渡瀬恒彦という2人の主人公が、時に反目・対立しながらも、最後は共闘し(渡瀬はクライマックスで“フェードアウト”してしまうけど……)、最後の最後まで、それこそ血まみれの“ボロ切れ”のようになるまで、巨大な敵・川田組に牙をむく、というストーリーが展開していく。

 『京阪神殺しの軍団』でも、マイトガイと辰兄ィの2大主人公が、お互いに“民族問題”を根底に抱えている設定で、共に「日本人のヤクザ」に利用され捨てられる空しさ・儚さが描かれていたが、『大阪電撃作戦』の松方・渡瀬は、殆ど民族問題には触れられないモノの、やはり“狩られる”側なんで、その絶望感は半端ない。そして、これはいつも思うところだが、「実録」でモチーフになる実際の事件をなぞっているから仕方がないのかもしれないけれど、どうしてもカタルシスに欠ける。ネタバレになるけど、松方は最後、下っ端の(でも劇中2番目に憎たらしい)成田三樹夫と差し違えて命果てるんだけれど、これでは敵の本丸に挑んだことにもならず、抗争自体は「双竜会」の全面降伏なんだから、何とももぞかしい。まるで『真田幸村の謀略』のラスト、家康の首をはねたと喜ぶ幸村役の松方が、直後に火縄銃の一斉放火で蜂の巣になって果てた後に、彼が殺害した家康が「替え玉」だったことが判明する空しさにも近い。これならば、同じ実録モノでも、北陸のヤクザとして最後「河田組と差し違える」と豪語して啖呵を切るところでラストを迎える『北陸代理戦争』の方がよっぽどいい。

 また場面場面の残酷描写、おびただしい血糊も、観ていて結構気が滅入る。もっとも、この時、監督助手として劇中3分の1を担当し、その殆どがこれら残酷シーンだったというのが、かの牧口雄二監督であったらしい。時期的にも『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』の被っているので、まさに牧口監督の面目躍如、といったところか(;^_^A

 ただ、この頃の作品は向こう見ずなくらい邪な勢いに包まれいて、どの作品を観ても、荒々しく激しい。そんなところが、これらの東映実録アクションに、結局惹かれてしまう鯨飲なのかもしれないな(;^_^A