身も心も「職人監督」
昨日のレンタルショップで“奇跡の遭遇”を遂げた東映異常性愛路線時代劇の3作品だが、この『徳川女刑罰絵巻牛裂きの刑』『毒婦お伝と首切り浅』『女獄門帖引き裂かれた尼僧』は全て、70年代の東映“低予算”プログラムピクチャーを支えた、牧口雄二監督である。
牧口監督のフィルモグラフィーを見るに、劇場公開作品はデビュー作の『玉割り人ゆき』から『らしゃめん』に至るまで僅か9作、それも全てが1975年~1977年の僅か2年間に集中している。これはある種凄いことだと思うし、しかも個人的な話になるが、今回の3作品を筆頭に、貴重な“実録路線”でタイトルに「広島」がついている『広島仁義 人質奪回作戦』や、かの「ウィークエンダー」の世界観を模した怪作『戦後猟奇犯罪史』は以前観て非常に気に入っているし、『玉割り人ゆき』や『らしゃめん』もいつかは観たいと願っていて、しわばこの9作全てに思い入れがある監督である。
会社の実情を鑑み、低予算の中、敢えて批判を浴びても扇情的なエログロ描写を惜しげもなく演出する手法は、俗に“巨匠”と呼ばれる“小綺麗な”監督と比べてもよっぽど立派だと思うし、劇場作品が2年間9本とはいえ、その後はTV界でしっかりドラマ作りに励んでいたというあたり、まさ真の「職人監督」といえるだろう。