神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『地獄』競艶!

 一昨晩のチャンネルNECOはなんと「『地獄』まつり」!! 夕刻より中川信夫版『地獄』(新東宝)と神代辰巳版『地獄』(東映)の連続上映という超豪華ラインナップ!! かつて新東宝崩壊直前に、ニュー東映と新東宝の合併話が持ち上がり(社名は『新東映』)、かの大蔵貢御大がその社長に納まるなんて話があったらしいが、そのことに思いを馳せると、かつてその渦中にあった「新東宝」と「東映」が、時代に違いはあれ、同じテーマで怪作を制作していたことは、非情に興味深い……(本当はそこにかの石井輝男御大の独立プロ版『地獄』が加わると完璧だったのに……(;^_^A)。

 さて今回は、新東宝の1960年版『地獄』の方を中心に観賞したのだけれど、やはりいかがわしさ・おどろおどろしさの点において、本作は凄まじかった……ドラマの全般はただただ主人公の善良なる天知茂演じる学生を陥れることに腐心しているかのごとき展開で、とにかく彼の行くところ、必ず悲惨な事態が起こり、更に彼を追い詰めていく。それこそ、“予定調和”の如く……そんな彼に絡む死に神のごとき沼田耀一の悪魔のような演技にも心底舌を巻く。かの“ベタベタな悪役”である『仁義なき戦い』シリーズ・山守(金子信雄)とはまた違った意味で、「これこそ全ての諸悪を人間にしたらこうなる」くらいのインパクトがあったもの。

 まさに収拾がつかなくなるくらいのカオスの中、後半は一方的な地獄の責め苦が始まる。“巻き込まれキャラ”的な天知も、やはり徹底して責め苦を味わわされ、針山地獄、血の池地獄などを強引に体験させられる。彼と一緒に地獄に堕ちた、極悪なる彼の実父を筆頭に、悪徳医師・悪徳刑事・執拗に天知に絡んできた彼の親父の情婦にいたるまで、「生皮剥ぎ」「鋸引き」「四肢切断」「全歯破壊」「舌抜き」などのあらゆる責め苦に苛まれる。まさに地獄だった……。

 東映の1979年版『地獄』は、新東宝版のスペクタクル性に比べ、東映独特の70年代系異常性愛路線の残滓といっていい不健康・不謹慎な展開で、気色悪さは新東宝版以上だった。それこそ何だか画面から生臭い匂いが漂ってきそうな雰囲気で、目を覆うばかりの醜い人間模様が描かれていて(特に岸田キョンキョンの演技は最高!)、主要な登場人物が地獄に墜ちるまででもう“お腹がいっぱい”に”なってしまったよ。その分意外にも地獄のシーンは今ひとつ迫力にかけ、且つ手狭なスタジで撮られたことが見え見えのシーンは、実に俗っぽかった。ただ、あまりにも地獄を描くシーンが壮大ながら“作り物”感に溢れていた新東宝版と比べると、気色悪さは群を抜いていたかな(;^_^A

 そう言えば、この『地獄』二部作で、意外にも一番残酷だったシーンは、東映版ラストの、輪廻転生したと思しき、砂浜に横たわって泣き叫ぶ赤ん坊のシーンだった。だって、炎天下の砂浜に、本物の赤ん坊を仰向けに横たえながら撮影してるんだもの……この撮影の“鬼畜”感は半端なかったよヾ(ーー )

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