神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『ひろしま』と『ゴジラ』と……

 先月3日の憲法記念日、女優の月丘夢路の訃報がメディアを流れた。94歳というから、見事な大往生といっていい人生だったと思う。第三者の立場で言えた義理ではないとは思うが……

 彼女が偉大な女優であったということはそれなりに理解していたが、私にとっては「“一和(どうも統一協会系の会社らしい)の高麗人参茶”のオバサン」のイメージが強く、役者としての輝かしいキャリアについては、殆ど知るよしもなかった。

 それが、彼女の訃報に際し、その経歴を垣間見たら、かの井上梅次監督の細君であったとか、本当は『白夜の妖女』で激しい濡れ場を演じながら、完全ボカシで上映されたため「日本の女優のヌード第1号」の称号を後の前田通子に明け渡してしまったとか、思いがけないエピソードの数々を知ることが出来たのだが、中でも興味深かったのは、彼女が広島市の出身で、その縁でかの原爆映画『ひろしま』にノーギャラ出演していた、というエピソードだった。

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 原爆の惨状を描いた作品の中でも、そのストレートすぎる被爆直後の惨状の描き方や、それからラストに向かってのやるせない展開で、語りぐさになっている伝説の映画でもある『ひろしま』。CGという安易な映像手段がなく、且つ特殊メイクも稚拙でしかなかった時代ならではの“生”の迫力、圧倒的な人海戦術による描写は、観る者を本当に暗闇に突き落とす“力”が感じられる。私も一度だけ後半部分をTV(ケーブル)で観たことしかないが、モノクロ画面に焼き付けられた“恐怖”は今も脳裏に残っている。

 その『ひろしま』で音楽を担当したのが、あの伊福部昭氏である。そしてwikiによると、この時の楽曲が、初代『ゴジラ』におけるゴジラ襲撃後の焼け野原と化した東京のシーンに流れる、俗に言う「帝都の惨状」として流用されていたのだそうだ。確かに、放射能を吐き散らして街を破壊するゴジラは「原爆」そのものであり、そのゴジラに破壊された東京の街は、さながら被爆直後の広島と重なるところがある。

 それにしても、伊福部氏が『ひろしま』の楽曲を『ゴジラ』で流用したことには大きな意義がある。それは明確なる反核のメッセージだ。少なくとも、観る者にはそう訴えかける。「核兵器」「放射能」というキーワードで漠然と関連づけられているように感じていた「ゴジラ」と「ヒロシマ」が、伊福部氏の楽曲によってはっきりと繋がっていたと考えると実に興味深い。

 月丘夢路氏の訃報から、思いがけない展開を迎えることとなった。キーワードはやはり「広島(ひろしまヒロシマ)」。