神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『ゴジラ 東宝特撮未発表資料アーカイヴ』① “1955年生まれの「ショッキラス」”

  『ゴジラ 東宝特撮未発表資料アーカイヴ』。この本は稀代の名プロデューサー・田中友幸氏が、生前きちんと保管していた過去の未制作作品の企画書、プロット、及び検討用脚本を掲載したもので、資料的価値のみならず、昭和のゴジラシリーズからのファンにとっては、無限の夢を与えてくれる名著である。

イメージ 1

 その『~東宝特撮未発表資料アーカイヴ』を、この度ようやく読破した。いやぁ、面白かった!(;^_^A  中でもとりわけ脚本に読み応えがあったね! ちなみに本書は大きく分けて
・「第1部 1984年版『ゴジラ』」
・「第2部 『ゴジラvsビオランテ』」
・「第3部 幻の未製作作品集」
の3部構成になっている。

 まず「第1部 1984年版『ゴジラ』」について。これは1975年の『メカゴジラの逆襲』で一旦幕を閉じた「ゴジラ映画」が復活するにあたり、『ゴジラ』(1984)に至までの過程で紆余曲折を経た記録が克明に記されていて、実に興味深い。かの『美女と液体人間』の原作で有名な、早逝した俳優・海上日出男が『ゴジラの逆襲』公開後に執筆した、「ゴジラ」「アンギラス」をはじめ、「巨大カメレオン」「始祖鳥」「大蛇」「人魚」、怪獣に寄生する「巨大蚤」、果てはゴジラを倒すために人類が創造した美女型巨大ロボット「花嫁」まで登場する、『ゴジラの花嫁?』なるとても壮大なスケールの台本があり、田中プロデューサーの頭の中には、復活にあたりこの本の存在がベースにあったようだ。

イメージ 3
こちらは本稿とは全く関係ない東宝レコードのジャケット(;^_^A きっとこれと混同する人いるよなぁ(;^_^A


 また、「雄雌ゴジラ」の設定や、「人工ゴジラ」(「メカゴジラ」というよりも『月光仮面 マンモスコング篇』の「人工コング」のノリ)の登場するもの、かの眉村卓荒巻義雄が名を連ねたプロット、後に幻の企画『モスラvsバカン』にも登場予定だった“三大変化怪獣”「バカン」とゴジラが戦う『ゴジラの復活』などの企画があったりする中で、ゴジラが核物質をそのままエネルギーにする設定の“ガメラ化”や、ドラマと平行して過激派の「核ジャック」が登場したり、主人公の身重の妻がゴジラ襲来によって命を落とすなど絶望感が半端ない『KINGofMONSTAR ゴジラの復活』(村尾昭中西隆三)の台本を経て、ついに84年の『ゴジラ』が誕生するわけだ。

 そんな過程の中で、上記の様にあらゆる脚本・企画が出、物語もその都度大きく変化しながらも、何故か『ゴジラの花嫁?』に登場する、“怪獣に寄生し、時として人間に襲いかかり、その存在が人類にゴジラの復活を知らしめる”「巨大蚤」の設定だけは連綿と引き継がれ、ついに『ゴジラ』(1984)の「ショッキラス」に結実するのには驚いた。これは早逝した海上の遺稿を何とか後世に活かしたいという、田中プロデューサーの“親心”のようなものが根底にあったと思えてならない。

イメージ 2

 他にも『ゴジラ』(1984)後のゴジラシリーズに関する様々な選択肢や、『ゴジラ』以外の東宝SF特撮映画に関する記述も実に面白かったが、この続きは次回に……(;^_^A