神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『女子高生ゾンビ』  稀代の“和製『ラスト・ブラッド』”はタイトルが足枷?

 『女子高生ゾンビ』という、実に“キワもの”なタイトルに、それなりの作品だろうと高をくくって観たんだけれど、意外にも上質のヒロインアクションムービーだったんで、驚いてしまったよ(;^_^A

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 作品の舞台は近未来(なのかなぁ?)の東京。やたら突っ張った女子高生が闊歩する世界で、「首切り女」の都市伝説がまことしやかに語られる中、同級生の失踪が多発する。そんな中、友人・ヨ-コを捜す主人公のミサキ(梶原麻莉子)は突如ゾンビの集団に襲われる。そんな彼女を救ったのは、特務機関のエージェント・アイリン(高部あい)だった。

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 このアイリンってのが、まさにヒロインの王道を行くキャラクターで、セーラー服姿にポニーテールって容姿は「スケバン刑事」初代麻宮サキの完コピ! しかも日本刀に拳銃も駆使してゾンビを情け容赦なく殺戮していく姿は『ラスト・ブラッド』の小夜そのもの。っていうか、本作は吸血鬼をゾンビ(劇中通称「赤目」)に変えただけで、“日本版実写『ラスト・ブラッド』"といっても過言ではない世界観だった。不死身の肉体を有し、圧倒的な強さで敵をクールにバッタバッタと粉砕していく姿には、本当に惚れ込んでしまったよ(;^_^A  もともと「高部あい」は贔屓の役者だっただけになおさらだ(;^_^A (この感覚は、仙道敦子が『セーラー服反逆同盟』でアクションヒロインを演じていたことを知った時と同じ感慨だ(;^_^A )。これだけでも、本作を演出した南雅史監督は相当の“ヒロインアクションマニア”だって直感したね(;^_^A

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 小沢和義演じる組織のマネージャーって設定もいかにも“ヒロイン王道”だし、ラスト、何の伏線もなく唐突に登場する意外過ぎる敵組織ナンバー2の存在など、逆に外連味たっぷりで、これまたヒロインアクションのあるべき姿を現しているようでうれしかったよ。

 画像も敢えて粒子を粗くすることによって、ビデオ特有の安っぽさを払拭することに成功している。またゾンビの視点でのアングルや、強烈なスプラッター特殊メイク等々、とにかく全編金と手間と工夫を十二分にかけて撮ったことが節々に垣間見られ、制作サイドの並々ならぬ意気込みが感じられて、実に好感が持てる。

 しかしながら、というか、それ故『女子高生ゾンビ』という“イロモノ”のタイトルで、残念ながら実に損をしていると思った。このタイトルでは、いかがわしいお色気残酷ギャグムービーを観る者は期待してしまう。でも本作の内容では、そんな鑑賞者の期待を大いに裏切ってしまうだろう。逆にハード設定の上質なヒロインアクションムービーを望む者からは、このいかがわしいタイトルのために敬遠されてしまうかもしれない。

 更に言うならば、本作は正真正銘“大真面目”に演出されているが故に、この手の映画にありがちな“大真面目なのにどこか可笑しい”といったさりげない“遊び”の部分がことごとく排除されている。主人公たちの過酷すぎる設定や、ストーリーに“イジメ問題”まで絡めた余計な社会派ストーリーも今ひとつ素直に楽しませてくれない“足かせ”になっている。それでも一応、主人公に絡む“お姐キャラ”の友人や、敵のJKブルマーゾンビ軍団など、笑わせてくれる馬鹿馬鹿しい要素は多々あるが、それも取って付けたようで変にあざとく、ギャグとして今ひとつシンクロしない。というか、制作者サイドは既存の(『スケバン刑事』などの)ヒロインアクション独特の外連味を潔しとはしない感覚で本作を撮っている。その分だけ、本作がなかなかしっかりした映画ではあるものの、今ひとつノレない(そして何度も観返す気にさせない)要素になっているような気がする。それ故、『女子高生ゾンビ』というタイトルと制作者の心意気とのギャップが実に惜しい。いっそ『ラスト・ブラッド』のような、粋で格好いいタイトルにすればよかったのに………もしくは敢えてタイトルに拘って“残酷ギャグ”路線で行くとか……

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 折角の素材、折角の出演者の気合いの入った演技など、素敵な要素が盛りだくさんなんで、出来れば話題にした初代『スケバン刑事』のようなノリでアイリンの活躍する世界を描いてくれたらうれしかったな……(;^_^A

 ちなみに、本作に出演している小沢和義暴力団幹部役の江原シュウとの競演は、シネマ愚連隊・高橋亨監督の撮った『極道忍法帳』を連想させるし、エージェント・アイリンの「セーラー服・日本刀・レッグホルスター装着の拳銃」という出で立ちは、同じく高橋監督の『餓鬼ハンター』の主人公にそっくりだ。さては南監督、高橋監督の一連の作品を観てるな(;^_^A