神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『デッドプール』~“初代仮面ライダー”の世界観に生きる無責任ヒーロー~

 DCコミックとマーベルコミックの違いもよく分からくて、バットマンもハルクもスパイダーマンもスーパーマンワンダーウーマンも一緒くたに“アメコミ”で括ってしまうほど無知な私なんで、今回の“デッドプール”がDCコミックのヒーローであることに特段拘りはない。でも、おそらく日本で言えば「円谷特撮」と「「ピープロ」ぐらい、ファンなら混同が許せないほどの違いがあるんだろうけど……(;^_^A てなわけで、今回は『デッドプール』を観賞。

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※以後はネタバレ注意!

 この作品、端的に言って、初代『仮面ライダー』なんだよね。怪しげな組織に改造された主人公が、その組織のボスを倒すってストーリー。主人公・ウェイドは不治の病を治してくれると言葉巧みにリクルーターに誘われて地下組織にやってきたものの、そこは人間を改造して奴隷としてたたき売る、というとんでもない組織で、騙されて改造される。そして不死身の肉体を手に入れたものの、その代償で顔をはじめ皮膚全体が焼け爛れ、二度と見られない姿になってしまう。そこで彼がその姿を隠すのに赤い全身コスチュームを身に纏うことになる。これって、不死身の身体の代償に人間の肉体を失った本郷猛が、顔の傷を隠すためにヘルメットを着用して戦おうという原作版『仮面ライダー』にそっくりだ。

 そのウェイドことデッドプールは、もともと毒舌の皮肉家だった性格をそのまま踏襲し、とにかく無責任で下らぬ皮肉を劇中吐きまくる。ここら辺が宣伝文句の「クソ無責任ヒーロー」たる所以なのだろうけど、それならば首尾一貫クールなキャラクターであってほしかった。確かに、始まってすぐ、なにやら訳の分からないうちにおっ始まる、ハイウェイでの一大殺戮シーンはとっても胸がすく(所詮、人畜無害な映画の中の世界だし)。ただここで最大のターゲットである、彼を改造したエイジャックスを取り逃がしてから、どうもまどろっこしい展開になっていくのは残念だった。彼を何とか更正させてX-MENチームに所属させようとする生真面目お節介超人コロッサスの横やりが何ともまどろっこしく、映画の流れを削いでしまう。また前後してインサートされるウェイドとストリッパー・ヴァネッサとの馴れ初めの辺りが、どうも彼のクールさから逸脱してじれったい。

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 ウェイド(デッドプール)の最大の目的は、エイジャックスを捕まえて自分の顔を元通りになおさせる事なんだけど、そんなじれったい展開の中で案の定ヴァネッサは敵方にさらわれ、ますます状況は厳しくなっていく。勿論そんな窮状に陥ってからがこの映画の真骨頂で、彼女を救うという大義名分の下、面倒くさいコロッサスやその仲間ネガソニックティーンエイジ・ウォーヘッドを仲間に引き入れ、意外に簡単に事を解決。しかし肝心のエイジャックスに彼の顔を直す能力がないと知るやいなや、コロッサスの制止も聞かず、問答無用に撃ち殺してしまう。まあこれで一応のめでたしめでたし、ということになるんだけれど、後にはもう元には戻れない、まさに本郷猛と同じ悲哀を背負わされたデッドプールことウェイドが取り残されるばかりであった………

 それにしても今回の作品、折角“アンチヒーロー”的な主人公だっただけに、ひたすらクールにトレートに敵を粉砕する物語だと期待していたら、意外に抜けの悪いまどろっこしい映画だった。デッドプールが不死身で、ある種完全無欠なヒーローだっただけに、“シュワルツェネッガー映画”のようなバカアクションになる可能性を生かし切れなかったのはとても残念だった。いつからハリウッド映画まで、スカッとしないくどいアクション映画を撮るようになったのだろうか………