80年代8ミリ映画の心意気!
この作品、勿論東映特撮のラインナップではなく、完全なる自主映画。それもどうも素材は8ミリフィルムのようだ(もしかしたら16ミリ?)。実はこの『狼男対ゴジラ』に関しては、創刊期のSF特撮雑誌「季刊宇宙船」のインディーズムービーコーナーで何度が紹介されていたので、その存在は知っていた。ただその記事を読んでから幾星霜……すっかり記憶の片隅にしまい込まれた存在だった。
それが今回そのスチールと共に実際の映像がUPされていたので拝見したところ、途方もないクオリティーの作品だった(詳しくは映像を参照)。
どうやら未完の様で、映像の方は専ら特撮シーンのばかりだったが、昭和東宝怪獣特撮に目一杯のオマージュを捧げたらしい(特に『キングコング対ゴジラ』『サンダ対ガイラ』『モスラ対ゴジラ』等)それぞれの特撮の精巧さは半端なく、中でもゴジラの着ぐるみの造形は、アマチュアながらアトラクション用着ぐるみなど遙かに凌ぎ、「これって本物のキンゴジスーツ?」と見紛うほどだった。また相手の狼男(“東宝フランケン”に倣い、既に巨大化)も、あたかも雪男を思わせるような全身白の毛むくじゃらでしかも精悍なボディを誇り“品のあるガイラ”といった風体。これまた見事な造形だ。
この映像を拝見したとき、東宝のプロの特撮マンが趣味で撮ったか、もしくは60年代に作られたパイロットフィルム(見た目はピープロよりクオリティ上(;^_^A)かと思ったほどだった。こんな形で拝見できるとは、往年の「宇宙船」読者としては感無量だった(;^_^A
それにしても、『シン・ゴジラ』の庵野監督が素顔でウルトラマンを演じる『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』や『愛國戦隊大日本』等、まだビデオ時代に移行する前の8ミリフィルム全盛の自主映画には、何かしら破天荒なパワーが満ちあふれていたような気がする。今のようにコンピューター制御のノンリニア編集、合成なんて夢のまた夢で、特撮の光線シーンも、ちっちゃなフィルムを丹念に傷つけながら描く「シネカリ」やエディター(編集機)の画面に手書きしてそれを更に8ミリカメラで撮る「エディター合成」なんてことを普通に行ってきた。マスキングによる「巻き戻し合成」ってのもあったっけ。
私も特撮にはてを出さなかった(出せなかった?)が、ビデオが8ミリに取って代わって全盛になった頃もまだ8ミリに拘って、やがて来たデジタル時代にようやく8ミリから移管した経緯がある。今となっては便利な機材によって、当時よりも楽に、綺麗に、しかも低予算で映画(映像?)が撮れるようになった。だが、今回の作品のようなものを観てしまうと、どうしても当時に思いを馳せてしまい「さて8ミリ機材一式をどこにしまったかな」なんて考えてしまう。
上映手段などを考えたら、全て8ミリフィルムで製作する、というのは条件的に困難だろうが、せめて8ミリフィルムで撮った映像をデジタルに記憶させ、印象的なシーン・カットとして挿入できないものか、なんて考えてしまった(;^_^A
そう思うと、実は80年代に撮影・編集しながら未だ日の目を見ていないとある自作のことを思い出してしまったよ……(;^_^A