神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『マイティジャック』の矛盾

  “特撮の神様"にして“ヒコーキ野郎”の円谷英二が『空飛ぶ戦艦』以来暖め続けた「夢」と、その息子・皐が所属していた縁で一時は「ウルトラQ」に先んじる「WOO」を円谷特撮ドラマとして企画したものの頓挫し捲土重来を期していたフジテレビの「思惑」とが結実して、1968年に日本初の“一時間枠特撮ドラマ”として華々しく誕生したのが『マイティジャック』。矢吹コンツェルンが私財を投げ打って建造した(制作費168億円!)万能戦艦「MJ号」とその11名の乗組員たちが、科学を武器に世界征服を企む秘密結社Qの野望を打ち砕くべく活躍する物語である。

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 そもそもこのドラマは「大人向けの特撮番組」を目標に掲げ、「007シリーズ」のような世界観に「サンダーバード」のようなメカニックを融合させて一大エンターティメントを目指し、一話におよそ1000万円をつぎ込んだ稀代の作品だった(らしい)。

 で、確かに当八郎(二谷英明)率いるマイティジャック隊員と科学時代の悪・Q諜報員との丁々発止の渡り合いは007のようなスパイ映画を彷彿させるし、「サンダーバード」のようにMJ号やその他のメカの描写も実に丁寧だ。しかし……この二つの世界の融合には結局無理があったのではないか。

 大人のドラマといえば、今ならいざ知らず当時はまだ“現実性”が求められたであろう。しかるに“万能戦艦”MJ号はあまりにも荒唐無稽すぎた。しかも一部の作品を除き、MJ号をもてあましてる感のするストーリーが多すぎる。要はMJ号か登場しなくても成立する物語が多く、ラスト近く、既にミッションが終了してから、潜水艦や敵基地を破壊するためMJ号が申し訳程度に登場する、ってこともざらだった。中にはMJ号が敵戦艦などと海中・空中戦を展開する話もあったが、如何せん「お子様向け」の雰囲気が強いものばかりだった。

 MJ号が“売り”だったのに、その存在が「大人のドラマ」に水を差す結果になったとはなんたる皮肉か……むしろ、13話で打ち切られた後に、30分全26話で制作され、怪獣や恐竜や宇宙人、ロボットなどが登場してうんとお子様向けになった『戦え!マイティジャック』になってからの方が、MJ号は生き生きと活躍していた様に思う。
 他にも、ストーリー展開が、折角従来の30分から特撮ドラマとしては珍しい60分枠になったのに、どうもドラマ展開が雑で、強引且つ支離滅裂な回もあった。円谷“文芸部”の面々も慣れない長編に逆に戸惑ってしまったのだろうか? 中にはかの金城哲夫御大の回にまで、強引な予定調和な場面が登場したし……

 実は最近改めてこのドラマをDVDで観直している(もうかなりの回まで観終えた(;^_^A)。放映当時はフジテレビのネットがない地域だったのでみることは叶わず、諸事情でTBSが60分を前後編2話に分けて放映していたときも、余り興味がわかず一度も観ることがなかった。学生になってからビデオで『メスと口紅』『月を見るな!』『爆破指令』の3話文を観ただけだったので、結構新鮮な気持ちで一話ずつ噛みしめながらの観賞である。結構否定的なことを書いてしまったけれど、日活アクションのような時代感に荒唐無稽なメカが登場するこの物語はなかなか楽しくて思わず観入ってしまう(;^_^A

 これからことある毎に、自分なりにレビューを書いてみたいと思っている(;^_^A