「薬師丸ひろ子」も人の子……
あれは中学二年生の頃だったろうか……『人間の証明』上映の熱気醒めやらぬ時、今度は同じ森村誠一原作による『野生の証明』が角川映画第3弾として制作されることとなり、その映画に登場する中学生のヒロイン・長井頼子役のオーディション募集広告が当時の新聞雑誌に掲載されていたものだ。『人間の証明』にすっかり魅了されて以来角川映画フリークになってしまった私は色めきだったが、その話をした同級生から「じゃったらウチのクラスの女子を応募したらいい」との意外な返答……その心は「だって、ウチの女子なら"野生の"にぴったりジャン」との一言……お後が宜しいようで……(;^_^A
ま、そんなことを今更声高に語ってしまうと「セクハラ」のそしりを受けてしまいそうになるのでこれくらいにしておくが、当時そのオーディションに合格し、以後角川映画の看板娘になっていったのが、何を隠そう、薬師丸ひろ子御大である。少なくとも80年代の彼女は他の女優・アイドルと比べても別格だった。その分構えたような、無機質のような、たまに出てくるTVでの応対を観るにつけ、偉大なヒロインなんだろうが、どこかつかみ所のない、精気のない女優というイメージがつきまとった。
それが近年、年相応にあったというか、今までの距離感が嘘のように、いい"お母さん"女優に成長してきた感がある。1980年代隆盛を極めたかの"角川の薬師丸ひろ子"のイメージが嘘のような"庶民派"女優になってしまったけれど、当時を知るものとしてはむしろホッとするというか、「ようやく彼女も"キャンディ-ズ"よろしく、普通の女の子……否、普通の女優になったんだなって、思うと心温まる思いだ。
でもそれでも"汚れない"いいお母さん役が目立った昨今だったが、最近CSで初めて観た『あまちゃん』に於ける、大御所ながら感情むき出しの軽薄な大女優・鈴鹿ひろ美役には正直驚いた。そしてそれと共に何とも幸せな気持ちになった。何といってもようやく彼女が軽薄で感情むき出しのキャラを演じられる様になったんだ、との感慨である。
初めて薬師丸ひろ子の人間くさい演技を観たような気持ちがして、逆に嬉しくなってしまったよ。
彼女にはこれからのキャリアにおいてもっといい意味での“汚れ役に”挑戦してもらいたいものだ(;^_^A