神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『北陸代理戦争』に思いを馳せて……

 今日、病院の待合室でたまたま「水戸黄門」の再放送が流れているのを観た。どうも佐野浅夫版“水戸光圀”で、敵役に女装の成田三樹夫が登場するという、なかなかコアな回だったんだけど……観ながらふと、「この前の黄門様役は西村晃だったんだよなぁ」ってふと思って、途端よぎったのがよりにもよって下の画像だった……(;^_^A

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 これは東映実録路線に止めを刺した『北陸代理戦争』の冒頭、出し抜いてきた舎弟・川田の怒りのリンチによって、雪中深く首まで埋められた安浦組長役の西村晃だ。この直後、彼は川田の操るジープのタイヤに何度も危うく踏まれそうになり、とうとう音を上げて、所有する競輪場の利権を川田に譲ることを約束させられてしまう(この直後、解放された安浦が寒さの余り煮えたぎった五右衛門風呂に飛び込むも、あまりの熱さに「アチャァ!」と飛び出すシーンが爆笑もの!!(;^_^A)

 この映画で川田を演じた役者こそ、先に逝去した松方弘樹御大その人である。

 本作に於ける川田こと松方弘樹アナーキーぶりは半端ない。先程の組長生き埋めリンチなど序の口で、兄弟分のハナ肇の裏切りには、その片腕を切り落として文字通り“落とし前”をつけ、敵対する大阪・金井組の幹部はショベルカーとブルドーザーで車ごと挟み撃ちにした上、叩き潰して圧殺処刑。相手の口を割らせるのにも、極寒の深夜、やはり首まで埋めて頭からタラタラ水を垂らす(当然たちまち凍っていく)ねちっこい拷問を敢行し、挙げ句は金井組の残党3人(小林稔侍・榎木兵衛・広瀬義宣)をまたもや雪中生き埋めにして、そのむき出した頭部を若衆の花巻(矢吹二郎)にジープで轢き殺させるなど、まさにやりたい放題(だから冒頭の西村晃はまだ幸せだったかもしれないな……ヾ(ーー )

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 しかし、この作品に於ける川田の立場は、自分の組からいいように利用され、且つ大阪の強大な暴力団の進出に手をこまねいている状況に反旗を翻し、まさに「一寸の虫にも五分の魂」を地でいくような活躍を魅せるので、意外にスカッとする展開だ。ラスト、強大な浅田組に差し違えてでも決戦を挑むと意気込む時の松方弘樹御大の演技は最高で、その後予想される絶望的な展開を考えても、実にかっこいい(;^_^A   実録路線最後にして、アナーキーなパワーと魅力に充ち満ちた作品だった。

 そんな川田のモデルとなった北陸の実在するヤクザ・川内弘が、この作品の完成直後、敵対する勢力に本当に射殺されてしまう事件が発生し(映画では劇中川田は最後まで生き残るのに……)、現実が映画を超える事態が発生した。これも実録路線が終わってしまう一因だったのだが、とにかく、今の時代には決して出せない、それ故当時をいとおしく思わせる逸品である。