『ハイキックガール』 ガチガチの“硬派なヒロインアクション”
そんな彼女のデビュー作『ハイキックガール』を過日ようやく観賞。「過日ようやく観賞」といえば、以前紹介した『THE MASKED GIRL 女子高生は改造人間』も挙げられるんだけど、ヒロインアクションムービーで公開時期も近い(『女子高生は改造人間』は2008年、『ハイキックガール』は2009年)この2作品が、その世界観というか“ノリ”という点においては全く別のベクトルに位置する作品である、というのは実に興味深い。『女子高生は~』と比べて『ハイキックガール』はガチガチの“硬派なヒロインアクション”だった……
さて、この『ハイキックガール』だが、ストーリーはきわめてシンプル。「黒帯狩り」と称して道場破り紛いの行為に明け暮れる空手少女・圭が、友人の軽はずみな行動から「壊し屋」と称する秘密結社と関わり合いを持ってしまい、師匠である松村と「壊し屋」軍団との抗争に巻きこまれてしまう、というのが大筋の流れだ。その間主人公の葛藤と心の成長も一応触れられているが、全編アクションとハッピーエンドな展開に包まれた、娯楽作品に仕上がっている。
ただ、アクションの緊張感が半端なく、『スケバン刑事』のように“安心して観られる”ような作品ではなかったのも事実だ。というか、ストーリーより何より、この映画はただただホンマもんの格闘技アクションをとことん描くために作られた作品といっても過言ではない。
事実、大きな技が炸裂する度に、ドラマは一端中断し、スローによる再生映像がインサートされる。それも「これでもか!」というくらい何度も何度も何度も何度も……繰り広げられる。純粋にストーリーを追っかけようと思えば思うほど、このインサートは妨げになってしまうことは否めない。“本物”の格闘家が無骨に演じているため、迫力のアクションシーンとは裏腹に、役者としてのオーラが若干希薄なのも、ドラマ的には弱点だったといえる(ただ「壊し屋」2軍のスケバン役で元AKBの秋元才加が登場したけど……)。
もっとも、制作者も監督も、そして観客もこの作品に求めたのはかっこいいアクション・殺陣、それに尽きるんだと思う。あたかも『マッドマックス 怒りのデスロード』がバイオレンスとスリルのみで構成された“ハードコアムービー”だったように……本作も“アクションの見本市”としての“ハードコア”と考えるのが妥当だろう。
ところで、劇中「壊し屋」の一員として“赤城”なるキャラクターが登場するんだけど、一構成員でありながらかなりの時間、圭と死闘を繰り広げる。そのアクションもまさに“死闘”と呼ぶにふさわしい激しいモノで、その壮絶なやりっぷりもやられっぷりも、「演技じゃなくてホントに戦ってるんじゃ?」と思うくらいだった。最後は武田梨奈嬢にマジで額を“串刺し”で蹴り上げられるんだもの……
その顔にどこか見覚えあると思っていると、実はこの「赤城」、本作の監督・西冬彦氏自身が演じていたのだった。道理でここまで情け容赦なく戦えたんだな、と納得。そういえば、件の西監督、アクション監督として『サルベージマイス』に参加した縁で、広島・バルト11での封切舞台挨拶に駆けつけていて、それで目撃していたから「見覚えがある」と思ったようだ……まあ、個人的な話だけどね(;^_^A