ウソから出た『マチェーテ』
タランティーノ・ロドリゲスのコラボによる『グラインドハウス』。ここで上映される4本のフェイク予告編『Werewolf Women of the SS』『Machete』『Don't』『Thanksgiving』のうち、『Machete』こと『マチェーテ』だけは、実際に長編映画化されたことは周知の事実である。まさに「嘘から出た誠」ならぬ「ウソから出た『マチェーテ』」とでもいったところだろうか。
さてこの『マチェーテ』は、よくある「ネタだけ拝借の別物映画」というわけではなく、本当に「予告編の忠実な映画化」(日本語になってるかな?)で、フェイク予告編と実際の予告編との差異はほとんど無い。強いて言えば、本編用のビッグネーム、ロバート・デ・ニーロやスティーブン・セガールがフェイク用キャストと差し代わっているくらいか。そこら辺の遊び心も嬉しい。
物語は、「分かりにくい登場人物による分かりやすい物語」といった風体で、とにかくハチャメチャ。中でも主人公のマチェーテが病院から脱出する際に、敵方の腹をかっさばいて引っ張り出した腸をロープ代わりに壁面を降りていくシーンなど、「ここまでやるか!」の思いに駆られてしまったよ。キャスティングの妙も秀逸で、本来マチェーテのような孤独の正義感を演じてばかり来たはずのセガールが、その対局ともいえる極悪の麻薬王であるという“確信犯的”なミスマッチもさることながら、御大デニーロが、これまたレイシストの卑劣な上院議員を嬉嬉として(ある種『デスプルーフ』カート・ラッセルのように)演じているところなど、“大物”らしくない役柄が実に面白かった。まあ、大物を“ムダ”に配置するのもこの種の映画のギャグの一つだが、こんなことが自由に出来る点(勿論マネーの力だろうが……)、ハリウッドはうらやましい限りだ。
ヒロインアクション的にも、捜査官役のジェシカ・アルバや女革命戦士役のミシェル・ロドリゲスがしっかり頑張ってくれていて、「超一流のB級アクション」(これも矛盾した表現かな?)に仕上がっていた。個人的には、当初敵か味方か判断しかねる危うさを持っていたジェシカ嬢の方がお気に入りだったかな?
何はともあれ、何にも考えず、まさに“延髄で観る”ような作品。そこが素晴らしい。こんな点もやはり邦画はまだまだハリウッドに敵わないのかなぁ……