神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

思い出のシネマパラダイス

 某番組で流れていたBGMが、娘の劇発表会の時の曲だったらしく「これこれ!」と一生懸命教えてくれた。そしてこれが何の曲か? といつも聞いてきたところ、今日CSで『ニューシネマパラダイス』が。実は件の曲はこの映画のメインテーマで、「これは」と思い、しばしチャンネルを合わせた。
 
 この映画に長年親しんだ私にとっては、劇中流れるどの曲もメインテーマに直結しているようにイメージしていたが、娘に言わせると「やっぱり違う」のだそうだ。それでようやく(実は後半からの観賞)、初老になった映画監督トトが、アルフレードの葬儀参列のためローマから故郷のシチリア島に帰省した際、近く取り壊される「新パラダイス座」の中を巡るシーンで、件のメインテーマが流れてきた。
 
イメージ 1
 
 「ほら、この曲だろ」と、おそらく“ドヤ顔”で娘に教えたと思うが、実はこのシーン、曲の哀感も相まって、実は涙なくしては見られない感動的な場面だった。
 
 幼い頃、映写技師のアルフレードと初めて出会った、そして彼の手ほどきで映画の世界にのめり込んでしまった、そんな大切な思い出が詰まった映画館が、映画斜陽とはいえ、公営の駐車場確保のために取り壊される……広島でも、西日本有数の客席数を誇った映画館・広島朝日会館が、長年の歴史の中、その使命を全うして取り壊され、今や駐車場になっている、そんな事実ともかぶる、何とも切ない設定だ。
 
 そこでふと思ったのが、当時のトトの力で何故この映画館を守らなかったのか、という点だ。その直前、葬儀の列で再会した、かつての映画館支配人スパッカフィーコが、何故か彼によそよそしい敬語を使うが、それは彼の映画界における立身出世を意味している。きっと売れっ子の監督だったのだろう。それならば、あれだけ思い出の詰まった映画館を、彼の権限と財力で引き継ぐことは可能だったはずなのに……。親愛なるアルフレードの死と、その思い出を紡いだ映画館の爆破シーンを同時期に目の当たりにしなければならなかったトトの無念さを思うと胸が傷む。勿論それが“演出”だったのだろうけど……
 
 取り壊し直前の「新パラダイス座」内に放置されていた、埃をかぶったポルノ映画のポスターが、この劇場の晩年の“あがき”を彷彿させて、それがまんま日本での場末の映画館の運命とダブるだけに切なくて仕方がないのだが、それも映画=ビジネスという縮図の運命ともいえる。
 
 娘のためにチャンネルを変えたつもりが、いつの間にか娘の度重なる質問に耳を傾けないまま、しばし本作の世界にどっぷり浸かって、しっかり感動してしまった。やっぱりこの作品は、映画制作に関わるものの琴線を多い日揺さぶる映画だと思うよ。