神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

涙サプライズ!

 いろいろあって、今回は我が素性にも触れながらのブログ更新。
 
 2年前、1年生6人ながら、いきなり秋の放送コンクールで番組部門最優秀賞(全国大会の“切符”)を(私の顧問歴としても初めて)手に入れた“金の卵たち”ももう3年生。今日(26日)及び6月9日に実施される放送コンテストが最後の活動の機会だ。

 もっとも、“映画バカ”の顧問である私の“遺伝子”を長い顧問歴の中で初めて受け継いでくれた彼女らは、“コンクール至上主義”である高校放送部の流れに逆らい、「娯楽性の高い中長編映画を何の制約も考えずに創りたい」とのポリシーから、昨年度夏のコンテストを区切りに、一切の放送部関係の大会を拒否してしまった。それは同じ志及び大会への疑問を抱いていた私と同じ方向性ながら、たとえば「前年甲子園に出場しながら、翌年敢えて地区予選をキャンセルする野球部」のごとき大変勿体ない話だった故、素直には受け入れがたい要求だった。また2作品のドラマを制作し満を持して臨んだ昨年夏のコンテストが予想外の低評価に終わり、審査への疑問から“捲土重来”を期して、と考えていた私にとってはかなりショックな提案だった。何せ、作品の面白さ云々よりも、全国大会に出場するか否かが価値基準となる放送部の場合なおさらだ。

 しかしながら、彼女らの頑なな態度は翻ることなく、私が試しに昨年秋のコンクールにドキュメントを制作させようと画策した際も、大反発を食らってしまった。そこらあたりから顧問と部員との向かうベクトルが微妙に食い違いはじめ、いろんな出来事もあって、昨年限りで私は放送部から離れる覚悟を持つに至った。

 それが紆余曲折を経て、再び放送部の顧問となったとき、年度当初の会合で、改めて「(ショーケースで)学校関係者以外の方からもこんなに評価される実力を持った君たちに、もう一度大会の檜舞台を踏ませてやりたい。というか、賞度外視で、あの入賞に拘った他校の部員に“本当の映画の面白さ”を教えてやる映画を撮らないか?」と現在3年生になった“金の卵たち”にダメ元で説得してみた。だがそれに対する彼女らの反応は冷ややかなもので、引退前最後の大会なのに、それよりも校内文化祭で上映する作品の方が大事だと言ってのけられたので、予想された結果ながらがっかりして、それ以上のことは言わずに来た。

 それから2ヶ月経った今週の木曜日。不意に3年生の部長と副部長が私の許に訪れた。変に改まってやって来たので、顧問の私に対する不満でもぶちまけに来たかと身構えたところ、いきない耳を疑うようなことを彼女らは言ってきた。

 「Nコン(夏のコンテスト)にテレビドラマを出品します。3年生6人だけで制作します。実は週末の土日に6人で毎週集まって、みんなで意見を出し合って台本を創りました。内容は“女性戦隊”モノです。これは先生が“ヒロインアクション”映画を撮っていらっしゃるのでそれに影響を受けて考えました。一応コメディーですが、謎解きサスペンスもあります……」

 確かそんなことを行ってきたと思う。ともかく、その話を聞かされたとき、私は思わず胸がいっぱいになってしまった。しかも、年度当初の私の弁に意気を感じてくれて、それ以降私に内緒で企画をはじめ、私を驚かそうと、その日まで発表を待っていたと言うのだ。もう泣けそうになったね。

 尤も聞くところによると、まだロケは始めていないとのこと。作品提出期限は5月31日。確かに8分以内ではあるが、撮影は?編集は?と当然聞き返したが、ロケはこの週末2日、オール同録で編集は随時進行。それで30日には完成予定だという。いやはや“早撮り乱作”の面まで顧問に合わせなくてもいいんだよ、なんて心配もしたが、とにかくこの心意気に大いに感動してこの土曜日は見舞いの合間、撮影に参加した。ちなみに文化祭用の半端ないホラーもまだ完成してはいないが、この作品が彼女らの最後の制作作品となる。

 身内の重大な出来事さえなければ。この週末べったり付き合って見守ってやりたいところだが、かつてこの子らが撮った『あのとき君が泣いたから』(2011年度市総文上映)『二度目の約束』『記憶』(共に2012年度ひろしま映像ショーケース上映)のクオリティを考えれば、そこそこの作品に仕上がると思う。後は提出期限に間に合うかどうかだ。まさに邦画全盛期のプログラムピクチャーのごとき過酷な条件の下、彼女ら“金の卵たち”の映画は現在進行中である。

 重すぎる現実に押しつぶされている私にとって、本当にほんのつかの間の、そして最大級の幸せだったと思う。まさに「涙サプライズ」!