神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

奥田圭子と時代劇との親和性

 昭和60年代ヒロインアクションドラマつながりで、『こんな学園みたことない!』について去る2012年1月7日に初めて言及して以来、この番組に対する数多くの方の熱い思いに気づかされると共に、貴重な“出自広島”のアクションヒロインである奥田圭子について、自分の中で再評価するようになった。

 

 恥ずかしながら、彼女に関しては劇場で観賞した『パンツの穴花柄畑でインプット』における優等生・島野ミチル役や、劇中挿入歌「夢ください―知・的・優・遊―」のイメージしかなかったが(ちなみに本作は菊池桃子主演の前作とは異なり東映の製作配給。彼女のもう一本の出演作『この胸のときめきを』も東映傘下の東映クラシックフィルムの配給。よって彼女の関わった映画は、全て奇しくも『スケバン刑事』を制作した東映系の配給作品だった)、現在、奥田圭子に関して様々な情報を発信しているリトルナーレさんのツイッターで、彼女が出演した時代劇が、それも時代劇専門チャンネルの放映に合わせて紹介されていたので、共に無事録画することが叶った。そこで、また魅力的な彼女を再発見することができた。

 

 まずはメジャー作品の『暴れん坊将軍』から。その『Ⅺ』の第20話「燃え上る恋の炎(ほむら)!出世を捨てた若大名」で、彼女はその“出世を捨てた”若大名こと新見藩主・関但馬守が、その身分を捨ててまで追いかける元腰元の遊女を演じていた。今は遊女に身をやつしてはいるものの、その花魁のごとき衣装の粋さには息をのむ思いだったし、それでいて父の仇を探し、内偵よろしく悪党の密談を盗み聴きしようとして捕らえられる女スパイ顔負けのピンチシーンや、回想時に登場する、城内で腰元の着物に身を包み、但馬守に優しく接する(そりゃ惚れるわけだ)姿とのコントラストなど、あたかも“女七変化”の活劇を彷彿させるノリだった。

 

 

 一方、「松尾芭蕉は隠密だった」という“都市伝説”のような「歴史異聞」をネタに展開する、時代的には『暴れん坊将軍Ⅺ』より古い、テレビ東京の『歴史サスペンス 隠密・奥の細道』第21話「炎に甦る女の涙」では、催眠術によって両親の仇から操られ、「黄門様」の名を受け芭蕉らを陰ながら護衛する公儀隠密を襲う刺客役を、彼女は演じていた。こちらはもう、殺陣もありの剣劇ヒロインアクションの様相を呈していて、催眠独特のうつろな目線のまま、若い日の佐藤浩市に挑む奥田圭子の身体能力の高さが堪能できる。しかも、マインドコントロールが解けて真相を知った彼女が、自らをはかなんで字自害しようとして佐藤らに押しとどめられたあとの、嗚咽を漏らしながらおびただしい涙を流す迫真の演技は、まさに一見の価値があった。

 

 もちろん、こちらとしては上記のようにヒロインアクション的見地(七変化・殺陣)を中心にこの2作品を観たんだけれど、実際観て感じたのは、意外にも彼女と時代劇との親和性だった。

 

 瞳が大きく、どちらかといえばモダンな面持ちの彼女が、ひとたび髪を結って着物を着流し、簪つけて時代劇のヒロインを演じると、これが実にマッチする。また思いがけないくらい古風な演具をするし、包容力も感じられるし、惚れ惚れする(;^_^A  『パンツの穴』のショートヘアーの優等生や、『こんな学園みたことない』の長髪をなびかせる可憐な女先生とは一風変わった、時代劇で魅せる彼女の魅力は、どんなシチュエーションでもフレキシブルにこなすことのできる演技的スキルの高さと、どんな設定でも映える美貌によって裏打ちされているといったところだろうか。

 

 彼女が最後にドラマ出演したのが前述の「燃え上る恋の炎(ほむら)!出世を捨てた若大名」で、それ以後21年間にわたってメディアから姿を消してしまっているそうなので、今やこれら過去の映像から彼女の姿を顧みることしかできないが、少なくとも20世紀と21世紀の狭間に、たぐいまれな才能を生かして、映画にドラマに活躍した女優・アイドルが、しかも地元・広島県三原市から誕生したしたことは、何とも素晴らしいし誇らしい気持ちになる。あわよくば、後世までもっともっと活躍してほしかったし、そんな彼女をもっともっと垣間見るためにも、貴重な記録である『こんな学園みたことない!』を早く我々が観直せる環境を、関係方面は構築してほしい。

 

 

 

 ところで、ヒロインの“七変化”は、『キューティハニー』や志穂美悦子の『華麗なる追跡』の例を挙げるまでもなく、とても魅力的な設定だ。そんなわけで、当方の“広島発ヒロインアクションムービー”シリーズで自作を企画・演出する際、この“七変化”の要素を主人公の設定に取り入れた。しかも片岡千恵蔵御大の『多羅尾伴内』の雰囲気そのままに、「明らかに正体がわかるのに、みんなの気づかないそぶりと驚き」の“お約束”を踏襲して、敢えて白々しい変装(衣装のみ)で緩~く演出した。それがのちに3部作となる『天使諜報★神宮寺真琴』である(;^_^A