神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

韓流アクションのダイナミック且つシュールな演出に酔う

 韓流“最凶”ヒロインの血みどろの活躍を描いた『悪女/AKUJO』。ムービープラスでの放映を録画しているので、いつかは腰を落ち着けて観賞しようと考えているんだけれど、一度録画してしまえばそれで安心してしまうのが世の常で、スタイリッシュなアンチヒロインの活躍に期待するものの、あまりにも痛々しくおびただしい血糊にまみれている(韓流アクションは結構この傾向が強い!)こともあって、未だ全編をきちんと観てはいない(;^_^A

 

 

 そんな訳で、時折ムービープラスチャンネルNECOで放映されているのをたまたま一部垣間観ることしかできていなくて、今までは冒頭の“疑似”ワンシーン・ワンカットによるスクヒ(整形前)の大殺戮シーンや、中盤の偽結婚式の合間にミッションを遂行するウエディングドレス姿のスクヒ(整形後・キム・オクビン)のスナイパーぶりや、謎解きを兼ねたクライマックスの大アクションぐらいしか観賞できていない。まあそれはそれで、ヒロインアクション的には「そこだけ押さえておけばオッケー」みたいな“肝”のシーンばかりなんだけど、この度たまたま観たのは、それとは別の、冒頭の大殺戮後、韓国警察に捕まったスクヒがそのまま国家情報院の暗殺者養成施設に収監され、顔を整形され国家の刺客として過酷な訓練を施されるシーンだった。しかしこの一連のシーンが実にシュールレアリズムに満ちていて、独房から一瞬のスキをついて逃げ出したスクヒが施設内を逃げ回る間、廊下の扉を開けたらいきなり娘たちがクラシックバレエに興じている部屋に飛び出したり、その先は厨房だったり、そしてさらにいきなり劇場のステージ、ざらには数人の女性が俳優ばりにメイクを施されているドレッシングルームだったりと、観ていて訳が分からなくなる展開。のちにその全てが、女アサシンを養成するために、戦闘テクニックのみならず、相手に怪しまれないために女性としてのあらゆるスキルを叩き込む施設であったことが判明するのだが、この意外性は、「韓流映画恐るべし!」と思わずにはいられなかった。

 

 ここでスクヒは、結婚後すぐに惨殺された夫との間に身ごもった娘を出産し、それまで身ごもの体だったことや、施設からの逃亡か不可能であることもあって、女上司のクォンに絶対服従しながら、もともと身につけていた身体能力をさらに磨き上げ、立派なアサシンというか“殺戮マシーン”となっていくのである。

 

 ところで、香港映画『スーパーティーチャー熱血格闘』では、元アメリ海兵隊員だったチャン(ドニー・イェン)がどうして除隊して母校の教師になったかを紹介する過程で、彼が海兵隊員として従軍した中東のシーンを、短い時間ながらきちんと本格的な戦場を手を抜かず描いていて、その丁寧さに驚いたが、この『悪女/AKUJO』でも、上記の施設のシーンがダイナミック且つシュールに描かれていて、その意外性と共に韓流映画の底力を感じさせる演出だった。

 

 邦画とくらべて韓流や香港の映画はどこか“安上り”で“大味”なイメージを勝手に持っていたが、それは大いなる“偏見”であり、“大陸”の映画は我々の想像を超えるスケールとち密さをもって、邦画を圧倒するどころか、既に全世界をマーケットした映画創りを行っているなって今更ながら感じる。『女囚さそり』や『修羅雪姫』推しのタランティーノならば、絶対『悪女/AKUJO』にはまりそうだし(;^_^A

 

 そうなってくると、邦画のアクションは、ハードな設定よりもむしろチープでコミカルでアットホームな方向性を模索しなければならないんじゃないかな。それこそかつての香港映画のように……(;^_^A