神宮寺真琴のつぶやき~TBossのブログ~

ヒロインアクションの考察から、インディーズムービー・劇場映画の話題まで

『アリエスの乙女たち』 侮るべからず!!

 先週末から『セーラー服反逆同盟』に代わって、土曜深夜のホームドラマチャンネルで放映が始まった『アリエスの乙女たち』。この番組が放映された当時は観た記憶もなく、番宣で流れる主題歌以外何も知らなかったことは、以前のブログにしたためた。

 

 といういわけで、ただただ南野陽子のセーラー服姿とタイトルのごとき“乙女チック”な雰囲気に誘われて(;^_^A、とりあえず録画だけはして、改めて観てみたんだけれど……我が想像をはるかに超えた、とんでもないドラマだった(゚д゚)!

 

 

 取り合えず観た第一話はこんな物語……。

 

 佐倉しおり演じる久保恵美子は私立・仰星高校の2年生で、生徒会長で馬術部の首相・磯崎隆志に密かな恋心を抱いている。そんな彼女のクラスに、南野陽子演じるパリからの帰国子女である水穂薫が転校してくる。勝気な性格でパリから連れてきた愛馬・エレクトラと共に馬術部に入部する薫は、さっそく仰星高校一の不良番長・結城司(松村雄基)に関心を持たれ、言い寄られるが激しく拒絶する。
 
 恵美子が所属する演劇部では、コンクールに向けて「ロミオとジュリエット」の芝居の練習を続けるが、ロミオ役の生徒が手術で入院、ジュリエット役の恵美子は途方に暮れるが、たまたま薫がパリの日本人学校でロミオ役を演じた過去があることを知り、強引に彼女を演劇部に勧誘する。そのことがきっかけで、恵美子は薫に対して、友達以上の感情を抱くことになる。

 

 薫の母親・マキは著名なデザイナーにして恋多き女性。彼女の夫である薫の父親は、薫が生まれてすぐに他界し、その悲しさから夫に対するすべての写真を処分したことになっていたので、薫は父親に関することは何一つ知らない。そんなある日、薫は街中で、父親との“デート”をしゃれ込む恵美子と遭遇し、3人で“お茶する”ことになるが、そこで薫の母親が恵美子が着ている服のデザイナーでもある水穂マキだと聴いた途端、恵美子の父親・哲也は急に顔色を変える。

 

 司がどんどん薫に惹かれていく様子に、司の彼女を気取る津川恵子は嫉妬し、司の配下の不良グループを彼に内緒でけしかけ、薫の愛馬・エレクトラを厩舎から引きずり出し、暴行を加える。それに気づいた薫は鞭を片手に不良グループを追い払おうとするが多勢に無勢。すると、今度は何も知らない司が血相を変えて飛び込み、配下の不良たちを完膚なきまでに叩きのめす。陰でその光景を見ながら舌打ちをする敬子。配下の不良たちに制裁を加える司に、薫は自作自演の茶番であると彼を罵り、激昂した司に胸倉をつかまれるも、そこに彼女を守るかのように恵美子が乱入。そこで彼女は思わず「私の薫さん」と口走ってしまう。その言葉を怪訝に思う司と、それを受け入れる薫。その光景を呆然と見つめる隆志をはじめとする馬術部の面々……

 

 そんな感じで、今後の波乱の展開を匂わせながら、ドラマの設定や相関図を紹介するかのような形で第一話は幕を閉じた。本作は第一話にして、大映テレビお家芸といっていい「ねじれた愛」の人間模様を炸裂させている。その中心(ある種狂言回し)といえるのが恵美子の存在。彼女は生徒会長の隆志に忍ぶ恋を貫きながらも、異性の薫に友達を超えた愛情を覚え、且つ父親の哲也にもほのかな”エディプスコンプレックス(エレクトラコンプレックス)”を抱いているという、何ともエキセントリックなキャラクターだ(彼女が精一杯めかしこんで父親と2人で遊園地で遊ぶさまや、帰りの車の助手席で、運転する父親の肩というか胸にすがる仕草など、常軌を逸した感がある)。もっとも、この作品が里中満智子筆による少女漫画を原作にしている点や、演じる佐倉しおりの少女然とした幼い(拙い、というわけではない)演技から、そんな生臭さは感じない。

 

 薫役の南野陽子も、前年の『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』よりは、よりナチュラルに、本来の彼女の等身大の演技ができていたような気がする。もっとも、劇中かなり激しい口調になったり、勝気な態度をとっても違和感を覚えないのは、やはり『スケバン刑事』の麻宮サキ(早乙女詩織)役に視聴者が慣れていたからではないか。特にクライマックスの不良たちとの大立ち回りも、「サキ」ならば一蹴するであろう不良たちに圧倒される展開にはなるものの、鞭を片手に果敢に挑む姿は、ちょっぴり『スケバン刑事』を彷彿させていたし(;^_^A  でも本来の南野陽子は、もっと可愛らしい役を演じてもよい女優だと思っている。

 

 実は私と同い年であることが判明した(;^_^A 松村雄基も、いっぱしの不良を標榜しながら、『ビー・バップ・ハイスクール』のような無秩序さや荒々しさはなく、意外に清楚でキザで、俗にいう“カッコいい”不良番長を演じきっていた。それはひとえに彼の端正な顔立ちに起因しているのだろう。実際どのドラマでも“根はいい奴”的なキャラが多いし(;^_^A

 

 他にも、既に透けて見えるように、薫の母親と恵美子の父親がかつて同棲していて、実は薫と恵美子は異母姉妹だったとか、隆志の父親である小説家の磯崎淳一郎が、校内で隆志と何かにつけて敵対する司の、その姉の結城小百合と不倫関係にあるといった、複雑に入り組んだというか、何とも“狭すぎる”人間関係がドラマの底流を流れている。

 

 脇を固めるキャストも実に多彩だ。“こっち側”の視点で紹介すると、生徒会長の隆志に、『ガメラⅡ レギオン襲来』の石橋保、薫の母親・マキに初期の『必殺』シリーズのおきん役や『北陸代理戦争』の野川由美子、恵美子の父親・哲也に『Gメン75』の若林豪、母親・小夜子に『女囚さそり』『修羅雪姫』の梶芽衣子(!)、隆志の父親・淳一郎に『本陣殺人事件』や“平成ゴジラ”シリーズの中尾彬、司の姉・小百合に『丑三つの村』の大場久美子馬術部顧問の大下教師に『特命刑事ザ・コップ』や、『江戸川乱歩の美女シリーズ・悪魔のような女』の冒頭で小川真由美演じる黒蜥蜴に半裸でホルマリン漬けにされる“美青年”役の宅麻伸を配している、という超豪華ラインナップ!  また、司をめぐって劇中ずっと薫と敵対する恋敵(ライバル)の敬子役に、薫役の南野陽子とはその前年『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』で「ビー玉お京」として南野「麻宮サキ」とタッグを組んだ相楽ハル子を配する辺り、フジテレビの確信犯的“遊び心”を感じさせる(;^_^A そして、その『スケバン刑事Ⅱ』での憂いを含めつつながらも淡々としたナレーションぶりが光った来宮良子を同じくナレーターとして抜擢、さらには司率いる不良グループの一角に、のちに大ブレイクする唐沢寿明(『20世紀少年』)が「唐沢潔」名義で出演しているのもご愛敬か(;^_^A(ここら辺の情報は実は家内の方が詳しく、他にも「舞・舞・舞」の竹宏治が、実は『ビー・バップ・ハイスクール』加藤浩志役の清水宏次朗であることも家内から教わった(;^_^A)。ついでに言うと、薫の愛馬の「エレクトラ」さえも、おそらく前述の“エレクトラコンプレックス”(娘が父親に恋慕の情を抱く心理)から来てるんだろうが、ヒロインアクションファンに言わせてもらえば、『スーパーガール』『キャットウーマン』と並ぶハリウッドヒロインアクションの魁といっていい、『エレクトラ』(『テアデビル』のスピンオフ)を連想してしまう(;^_^A

 

 スタッフにも、東映他特撮・アニメ番組には欠かせない菊池俊輔を作曲に配しているので、劇半を聴いてもワクワクしてしまう。80年代では当たり前だった「4:3 フィルム撮影」の映像も、今観ると新鮮だ(;^_^A

 

 そういえば、本作は私学の名門校、っていう設定からか、ヒロインたちのセーラー服の下は白ソックスではなく黒いタイツ(ストッキング?)。ここら辺からも「お嬢さん」の雰囲気が醸し出されている。薫の自由奔放ぶりを憎む馬術部の女先輩もいる辺り、「お嬢様女子高」のようなドロドロした展開も今後予見される。

 

 当初は、最初に書いたような邪な理由で録画を始めたこの『アリエスの乙女たち』だが、素敵なキャストにも恵まれ、大映ドラマとフジテレビがタッグを組んだ、究極の「ねじれた愛」な展開が今後大いに期待できる。まあ、wikiにはラストまでのあらすじが記されていて、その顛末はすでに預かり知れているのだけれど(;^_^A、そこに至るまで、どんなエゲツないエピソードで進行していくのか。興味は尽きない。もっとも、現時点で十分ドロドロしてるんで、個々の展開がこれ以上複雑怪奇にねじ曲がってしまったら、さすがに「もう結構」って思うかもしれないな(;^_^A